下書き うつ病勉強会#82 光トポグラフィ(NIRS)の診断能力についての質問などよく受けるのですが

最近、光トポグラフィ(NIRS)の診断能力についての質問などよく受けるのですが、専門ではありませんのでごめんなさい、と話を終わるようにしています。大人の対応です。
しかし、「下書き うつ病勉強会#66 光トポグラフィ(NIRS)」 で紹介したように、光トポグラフィでは、頭蓋骨の外側で計測するので、ヘモグロビンの量と言っても、頭蓋骨にごく近い部分のわずかの血流が分かるだけです。うつ病や双極性障害は脳の深部には関係ないのでしょうか。脳の表層部に病変があると確定したのでしょうか。あるいは、脳の深部の病変の変化は、脳の表面の血流で確実に調べられるのでしょうか。とても謎です。
つまり、(1)脳の頭蓋骨近くだけしか調べられない。
つぎは、

(2)脳血流が増加したことで脳が活発に活動していると認定するといいます。うつ病なら多分、その逆なんでしょう。つまり、うつ病の場合には脳血流量が減少する。それはそうかもしれません。しかし、神経細胞が活動していないからという理由で、血流が少ない時期もあるでしょうが、時間が経過して、再建が進むと、血流が多くなってくると思います。そうなると、血流の多い少ないで何かを判断することもできないでしよう。レジリエンスについては考慮に入れず、ただ機能が失われ、血流も低下するという考えなのでしょうか。

次には、(3)位置決めの問題。放射線科で脳腫瘍に対して放射線を放射する場合には、とても精密に位置合わせをします。他の部位に放射線を当てると大変ですから当然慎重です。それに比べると、いかにも、位置合わせが、不正確で大雑把ではありませんか?脳はそんなにも大雑把なものなのでしょうか?放射線を当てるわけではないのですから、まあまあ少しは不正確でもいいのかもしけませんが、それで正確な診断ができるものなのでしょうか。


電磁気刺激の時も同様ですね。だいたいのところで大雑把に刺激します。脳は個人差もかなり大きいと思いますし、人によっては、ある部分の脳神経機能が低下したから別の部位の脳神経がその機能を肩代わりしていることもありますので、その場合は、本当は部位ごとの機能テストを並行して行う必要があるはずです。そんなことも何も無視して、海馬だとか言っているわけですね。脳は進化の最先端ですから、個人ごとの変異も大きい。その変異が、進化なんですから、ないと困る。みんな同じなら進化は起こらないでしょう。左利きの人の場合に、脳の機能分化がどうなるのかの資料もたくさんありますが、左利きという分類がそもそも雑すぎるようです。左利きにもたくさんの種類があるわけですから。

(4)そもそもの話なんですが、「うつ病や双極性障害の診断は時々難しいことがある、だから光トポグラフィ(NIRS)で正確に診断します」とか言うでしょ?これはとても謎なんです。
確定診断の方法があるなら、それでやればいいですよね。
でも、そんなに確かなものがないから、困っているはず。
それなのに、光トポグラフィで正確に診断できるというのは、どういう意味なんでしょう?
「今はまだ未知の正しい診断法(A)」があって、それによって診断が分かって、それと光トポグラフィの診断を比較してみて、光トポグラフィは正しいというのなら理屈は通っていますね。でも現状で、確定診断法はないのです。


例えば、いろいろ調べても、単極性うつ病だと診断されたとします。それから2年くらいして、やはり躁状態の時期があったことが明らかになり、診断が双極性障害に変更されたとします。私はそもそもこのような事態が起こること自体が思想としても間違っていると思いますが、それはそれとして、このようなことがあるので、血液とか髄液とか、光トポグラフィとか、その他、確実な検査を世界中で探し求めています。しかし問題は、「正しい診断法(A)」がまだ分からないことなのです。新しい検査法が本当に正しいのか、決められない。

光トポグラフィが世界で初めての確実な診断法だということなのでしょうか。それはどのようにして証明されるのでしょうか。こう考えてみると、診断が正しいという言葉の中身を考えると、病気の理解や分類が正しいとき、はじめて、正しい診断が成立するのではないでしょうか。DSM-5はその下準備でしかありません。

たとえば、普通の診断ではうつ病とされたものが、光トポグラフィで双極性障害と診断されたとします。こんなことはめったにありませんが、そうなったとしましょう。そしてその2年後に、躁状態の時期があったことが確実になり、双極性障害の診断が確認されたとします。そしてそのような例がたくさん、繰り返し起こったというのなら、確かに診断法としてはかなり確実なのかもしれません。しかしそのような事実はありません。

そしてさらに、光トポグラフィは双極性障害とうつ病のどこの違いをどのようにして検出しているのか説明されなければなりません。その時点でようやく、検査の一つとして有用だということになるでしょう。それももちろん仮説段階でしかありません。


現状で「正しい診断が何か」知ることができないのに、なぜ光トポグラフィは正しい診断が下せると主張できるのでしょうか。

双極性障害のうつ状態と、単極性うつ病のうつ状態を比較して、鑑別しなさいとなれば、容易ではありません。新しい装置でそれが鑑別できるなら素晴らしいことですが。どうでしょうか。