下書き うつ病勉強会#118 反応性・心因性・神経症性うつ病-2 相互浸透

人間の脳というシステムを、遺伝子、脳神経細胞+脳神経細胞を支える細胞(ミクログリアやアストロサイトなど)、脳神経回路、脳全体などと階層を考えてみると、内因性うつ病は、遺伝子から始まって、神経細胞に変化が起こり、その結果脳神経回路に変化が起こる、となるだろう。

反応性うつ病は、感覚器から情報が入力されて、それについての解釈・反応が脳神経回路でなされる。

つまり内因性うつ病は遺伝子→神経細胞→脳神経回路であり、反応性うつ病は、エピソード→感覚器→脳神経回路となる。

一方は内側から神経回路まで、これが内因性、他方は外側から神経回路まで、これが反応性。

環境との関係でいえば、環境と脳が反応するときは、環境からの情報が感覚器から脳神経回路に伝達されそこで神経回路が反応する。その際には性格として観察されることになる。環境因、状況因、性格因はこのあたりの事情である。

変化が波及する方向で考えると、環境からの情報は脳神経回路に到達してさらにさらに進み、脳神経細胞に変化をもたらし、さらに遺伝子にまで影響することもあるだろう。エピジェネティクスの議論などがこの方向の話だろう。

逆に、遺伝子から外部環境への影響は、遺伝子→神経細胞→脳神経回路→脳全体となって、つまり、性格や環境などに影響することになるだろう。

だから内因性と反応性が違うものであることは確かであり、実際、方向がまるで逆である。しかしどちらも、脳のすべての階層に影響を与えるという点では同じである。

しかも、内因性病態では、ほぼ必ず、大なり小なりの反応性病態が起こる。

内因性のメカニズムは、例えば、遺伝子プログラムから始まって、言語習得に臨界期があるとか、時期が来れば性的成熟が起こるとか、またテロメアなどの事情があって、時期が来れば老衰に至るとか、これらと同じように内発性に生じるものである。これらの場合に、環境因が全く作用しないかと言えば、そうではないように、内因性でも、変化が遺伝子から発信されている時に、同時に逆向きに、環境からの情報が神経回路にも神経細胞にも届いている。

火事と焼け跡でいえば、内因性では遺伝子が原因で神経回路でシゾフレニーの増悪、マニーの増悪、てんかん発作、憂うつエピソードや喜び消失エピソードという火事がおきて、その後焼け跡になって修復過程が進行する。その修復過程がうつ状態となる。

反応性成分としては外部環境からエピソード情報が届き、そのあと感覚器→脳神経回路に到達し、反応が起こる。この反応の際に、場合によっては火事が起こる。そしてそのあとの焼け跡の修復プロセスが進行する。それがうつ状態として観察される。

こうしてみれば、内因性も反応性も、内側から、また、外側から、脳神経回路に影響を与えているのだということが分かる。内因と心因は排他的ではなく、同時に成立している。脳神経回路で火事が起きて、修復が始まる。この被害が、神経細胞レベルの形態変化となるならば、死後脳でも観察ができる。しかし回路の変化にとどまるならば、現状では簡単には調べることができない。