野球の話 ショートアーム

・大谷の投球フォームが少しずつ変化している。コンパクトな腕の振りが特徴のフォームはショートアームと呼ばれている。MLBで流行りのショートアームである。腕を大きく伸ばして遠心力を生み出して投げるフォームと違い、球速よりもコントロールを重視しているらしい。

・ショートアームとはテイクバックで腕を伸ばさず、肘を曲げたままの状態で上げ、早く小さくトップの位置を作る投球フォーム。腕を伸ばして肩肘を背中側まで引いて、大きくトップをつくる一般的な投球フォームと比べると、腕の使い方はかなりコンパクトだ。  米球界では大谷、ダルビッシュ、20年に最多勝など3つの投手タイトルを獲得したガーディアンズ・ビーバー、今季からDeNAに加入したバウアーらエース級でもショートアームの投手がいる。

日本でも若手を中心に目立ってきたショートアームのメリットとは-。選手やコーチの話を総合すると、最大のメリットは「リリースのタイミングが合う」こと。これが多くの効果を生む。

 ①ボールに伝える力のロスが減る

 身長190センチのオリックス・山下は22年の腰のケガを機に挑戦を決意。193センチの大谷、196センチのダルビッシュら長身選手の動画を参考に、大谷似と言われるフォームを作り上げた。

 「(リリースの)タイミングがハマるようになって、足だけを意識できるようになった。悩んでいたことの数が減った」。リリースポイントが安定することで確実にボールへ力が伝わり、球威にも変化が表れる。復帰戦で最速を更新し、直球の数値は全て良くなったという。

 中学まで内野、捕手を守っていたことがショートアームにつながったという日本ハム・金村も「(テイクバックを)大きくするとリリースが合わなくて、ボールが垂れたりした」という。

 ②制球力の向上

 阪神・西純は21年のフェニックス・リーグで打ち込まれ、サンズに「バウアーの動画を見ろ」と助言されたことをきっかけにフォームを変更。バウアーや大谷、ダルビッシュの動画で足の使い方などを参考にしたという。

 「コントロールが格段に良くなった。左足が着く時にはトップが作れているので(体重移動と)同時にリリースできるので。腕を振り下ろすだけ、という感じで投げられる」

 以前のフォームだった21年はストライク率57・0%だったが、22年は65・2%。同年セ・リーグで最も四球が少なかった巨人・菅野(66・4%)、西勇(65・1%)と遜色ない数字を残している。今季も66・7%と制球力は向上している。(データはJapan Baseball Data)

 ③肩肘への負担軽減

 大谷は18年10月に受けたトミー・ジョン手術を受けた後、現在のフォームに変更した。その一番の目的は肩肘への負担を軽減させること。21年キャンプでは「強度を高く投げようと思ったらズレてきたりするので、しっかりとした強度の中でもそういうタイミングを合わせられるように」と話している。

 阪神・安藤投手コーチも現役時代、肩を負傷した際に肩への負担を減らす狙いでショートアームへの変更を試みた。「大きく腕を回すフォームだとタイミングがずれた時に、どうしても肩肘への負担はかかる。でも、ショートアームだとずれる確率は下がるから」。最終的には変更しなかったが、負担軽減に向けて練習したという。

・球威が落ちる。野球を始めてから投げ続けてきたフォームを変更すると、ボールにうまく力を伝えられなくなった。「小さい時から大きく腕を回して、投げることに慣れてしまっている人はなかなかショートアームは難しいとは思う」。

・投手が上半身のウエートトレーニングに取り組むようになったことも、ショートアームが目立ちだした要因だ。上半身が強い人ができるフォームだ。大谷選手やメジャーリーガー、日本で言えば山下投手。