下書き うつ病勉強会#155 高齢者のうつ病-1

歴史的にドイツ精神医学では、「うつ病」は内因性うつ病(endogenous depression)、神経症性うつ病(neurotic depression)、反応性うつ病(reactive depression)の3 種類が区別されていた。

原因・経過治療
内因性うつ病外的要因なしに体内要因によりひとりでに発症する「内因性」うつ病であり、定型的な悲哀感情・メランコリーを特徴とする重症の抑うつ症状が、その人ごとの周期性を持って繰り返して発症する。抗うつ薬
神経症性うつ病もともと神経症素因を有する者が、ストレスにさらされたときに、神経症的素地(内因)と心理的ストレス(外因)とがあいまって抑うつ症状を呈するものをいう。神経症的素因のために心理的要因が取り去られた後も一定期間の抑うつ症状が持続する。精神療法
反応性うつ病反応性うつ病は過大なストレスに遭遇した場合には誰にでも起こりうる反応であり、抑うつ症状はストレスがなくなると消退する。心因ストレス除去・生活環境改善

内因性うつ病は生物学的うつ病。しかし「ひとりでに発症する」という観察は理念的なもので、人間が生きていれば様々な出来事はあるわけだし、内因性うつ病のプロセスがやや進行したところで、行動が変化し、そのことがイベントとなってうつ病の発現に至ることがあるが、それはたとえば執着気質についての説明文でよくわかる。仕事がきつくなってきて、普通の人ならば、疲労によってそれ以上の努力はできない地点に至るのであるが、執着気質の人の場合には、疲労は感じるものの、なお熱中性を発揮して仕事をやり遂げてしまおうとする、そこで一般的な疲労よりも一段深い疲労に至る。そしてうつ病が始まる。そのような場合は、エベントが向こうから勝手にやって来たわけではなく、患者の側での変化が先行していたと考えることができる。

神経症性うつ病は、個体の側の神経回路にある程度の異常がある場合である。遺伝子と環境との反応の積分としての脳神経回路が、性格障害や性格因性うつ病を準備する。フロイトの意味での神経症もこのレベルのものである。この場合も、生きている限りいろいろなイベントに遭遇するので、心因性がゼロとは言えない。

心因性うつ病は、個体の側の神経回路の特性には責任がほとんどなく、イベントから発生する心因がもっぱら100%の原因となっていると考えられるもので、適応障害、急性ストレス反応、PTSDなどがこれにあたる。しかしながら、過酷な環境であっても、やはり受け取り方には個人差がある。

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うつ病性障害においてはまず気分・感情の障害が認められる。気分は落ち込み、感情的な反応性が低下する。うつ病を特徴づける興味・関心・自発性の喪失に加えて、感情鈍麻、空虚感、不安、緊張、易刺激性、欲求不満、易怒性などの症状が認められる。思考においても、集中力低下、優柔不断、自信・自尊心の喪失、無価値感、自責感、罪業感、無力感、悲観的思考、絶望、自殺念慮などの思考内容の異常が認められる。そして精神活動が抑制され、動作の緩慢・制止、表情の欠如、会話の減少、対人接触の減少とともに、情動不安定、落ち着きのなさ、激越、焦燥などの症状が認められる。

身体症状として不眠ときに過眠、食欲低下、体重減少、性活動の低下、疲労・倦怠などの症状とともに自律神経症状、消化器症状、呼吸器症状、循環器症状など多彩な身体不調を訴える。

このような症状は図 1(A)に示すように、まず感情・気分の落ち込みから始まり、その後に引き続いて思考内容の落ち込み、言動の制止、自律神経症状・身体症状が出現する。また、回復過程においては逆の順序で症状が消失していく。

ICD や DSM は操作的な診断基準であり、診断するときに同時に存在する症状により診断しようとする立場であり、精神症状の発生原因や症状の時間経過についても注意が払われなくなった。

ここでは気分→思考→行動→身体の順で症状が出現し、逆の順で消えていくと紹介しているが、この順番については異論がある。身体の不調から始まるとの意見がある。また例えば、身体と精神の境界部分で症状は始まるとする考えもある。

症状の発現と消失に順序があるとの観察がもし正しければ、それは病変の脳局在との関連で重要な情報である。しかしながら、それほど確定的な報告はないように思う。

仮に、上述のような順序があるとして、またその次に述べたような逆の順序があるとして、たとえばてんかん発作の一部では、異常放電部位の移動に伴って、症状の変化が見られると理解されているように、症状の変化は病変の変化を示しているはずだということになりそうであるが、簡単ではない。

気分・思考・行動・身体と並べて考えてみるとして、これらは同じレベルの症状なのかどうか確認が必要である。

思考よりは気分が発達・進化的に古いもののような気がする。行動の変化は当然、その背後に気分や思考の変化があるはずである。たとえば錐体外路症状のようなものは思考も気分も関係ないだろうが、運動が抑制されて動きが乏しくなるとしたら、それは運動神経に病変があるのではなく、運動を起こさせる運動発動部分が変化しているということだろう。だから、精神運動抑制という。運動抑制ではない。psychomotor retardation というもので、psychoから発したものということになる。

原則的に考えて、機能成立に多くの部分が関係している機能は、失われやすいだろう。少ない部分が関係しているならば、失われにくい。病因に近いから、A症状が一番最初に始まるのではなくて、Aを成立させている部分が多くあるので、そのいずれかが機能不全になったとき、症状として観察されやすいということになる。

たとえば不眠症はその典型で、様々な条件が同時に整ってはじめて良い睡眠が成立する。電池を直列につないだ状態であって、どれか一つが故障しても、全体の故障として表現される。

直列につなぐのではなく、並列につなぐ方式であれば、一部が機能不全になったとしても、全体の機能は維持される。呼吸とか血液循環とかはそのようなタイプではないかと思う。

易刺激性、易怒性、情動不安定、落ち着きのなさ、激越、焦燥についてはbipolarityであるとする考えがある。私はこれに賛成。

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うつ病性障害の有病率は高い。一般地域住民の5~15%にうつ病性障害があるとされているが、入院患者ではうつ病の有病率は 22~33%と報告されている。特に重篤な疾患、慢性に経過する疾患では高いうつ病の発症率が知られており、脳卒中の発症後 2 週間までの調査では 47%にうつ病が発症する。心筋梗塞については発症数日以内では45%、3 カ月では 33%が報告されている。がん患者では 33~42%にうつ病性障害が報告されている。1995 年以降の調査では高齢者における大うつ病の有病率は 2.0~6.1%の範囲にあり、大うつ病と小うつ病とを合わせた高齢者における有病率は4.5~26.9%と幅広い値が報告されている。

わが国で行われた一般住民を対象とした気分障害の大規模調査(2007)では、うつ病エピソードの生涯有病率は 6.6%、12 カ月有病率は 2.1%である。世界各国のうつ病の有病率は、13.3~17.1%とされており、わが国の有病率はこれと比較すると低い。男女別でみると、うつ病エピソードの生涯有病率は女性で 9。1%、男性で 3。7%であり、女性の方が 2.5 倍高いが、これは欧米諸国にみられる性差と同じである。

年齢別では、欧米では若年者に頻度が高いが、わが国では若年者とともに中高年でも高い有病率がみられる。

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高齢者におけるうつ病の有病率は高い。この理由として、高齢者に特有の心理社会的要因をあげることができる。多くの高齢者は、身体的・心理的・社会的な「喪失体験」を経験する。高齢者では体力低下・身体機能低下とともに健康状態が悪くなり、慢性疾患に罹患する割合が高くなり、「身体的喪失」を経験する。また、職場からの退職、家族・友人・同僚との死別による「心理的な喪失」、さらには経済力・社会的地位の低下による「社会的喪失」は、いずれも単独であるいは重なり合ってうつ病発症の契機となりうる。

近年、高齢者うつ病の中には「血管性うつ病」という概念で説明できるものが多いと考えられており、高齢者にはうつ病を起こしやすい身体的理由があるという理解につながっている。

脳卒中後遺症患者の 30~40%にうつ病が報告されている。脳卒中のあとにうつ病が多発する理由について、脳卒中という生死にかかわる出来事を経験したあとの心理的反応として理解されていた時期もあったが、同程度の身体障害を呈する整形外科疾患による入院患者と比較してもうつ病が多いこと、脳卒中や頸動脈狭窄の患者では末梢血管障害と比較してうつ病が多いこと、脳卒中と心筋梗塞ではうつ病の頻度は同程度であることの報告などから、血管障害を原因としてうつ病が発症すると理解されるようになり、血管性うつ病の概念が提唱された。

この概念は Robinson による「卒中後うつ病(post stroke depression)」に遡ることができる。Robinson によれば、脳卒中患者の19.3%に大うつ病、18.5%に小うつ病がみられるという。卒中後うつ病の精神症状は、いわゆる機能性うつ病のそれと比較しても大きな差異はない。脳卒中の部位とうつ病の発症とはある程度の関連があり、約 6 割に左前頭葉の脳血管障害があり、左前頭葉のなかでも前頭極に近いほどうつ病症状が強いという知見にもとづいて、うつ病と左前頭葉の深部白質の神経基盤との関連が示唆されている。

もともと、高齢発症うつ病では、若齢発症うつ病と比較して、症状に特徴があること、家族内集積が低いこと、人格障害の合併が少ないことなどがいわれていたが、MRI 脳画像の導入とともに高齢者のうつ病における多発性小梗塞や深部白質病変が注目されるようになった。脳虚血性病変を有するうつ病患者では、薬物に対する反応が乏しく、寛解後にも認知障害が残りやすく、再発が高く、慢性うつ病に移行しやすいことが知られている。このような事実から、高齢者のうつ病の発症は血管病変と関係があることが示唆され、Alexopoulos や Krishnan により血管性うつ病(vascular depression)の概念が提唱された。

高齢者のうつ病では、脳血管障害の危険因子を有するものの比率が高いこと、高齢者うつ病の脳画像では、基底核や深部灰白質における T2 での高信号(deep white matter hyperintensities:DWMH)や脳室周囲白質高信号(periventricular hyperintensity:PVH)が多くみられること、高齢者うつ病では剖検脳の神経病理学的検索において動脈硬化性病変・虚血性病変が多いこと、冠動脈疾患患者にうつ病が多いこと、脳卒中患者ではうつ病が多いこと、血管性痴呆、高血圧、糖尿病患者ではうつ病が多いことなどはいずれも血管障害によりうつ病が発症するとの「血管性うつ病」の概念を支持している。

逆に、うつ病が虚血性心疾患および脳卒中のリスクとなることもよく知られている。米国心臓学会は脳血管障害のリスクとしてうつ病、高血圧、喫煙、糖尿病、頸動脈狭窄、高脂血症、心房細動、ライフスタイルをあげているが、これらの危険因子の中でもうつ病は最大のリスクである。ロッテルダム研究の一環としてなされたうつ病と動脈硬化の相関についての報告では、60 歳以上 4019 人の地域住民について動脈硬化の程度とうつ病との関係を調査したものであるが、うつ病の既往のある人に頚動脈プラークのサイズが大きいこと、うつ病の既往のある人に冠動脈石灰化の程度が強いことが示されており、うつ病は動脈硬化のリスクとなることが強く示唆されている。

うつ病と血管障害とは、いずれも動脈硬化と関係しており、動脈硬化は脳血管障害のリスクであり、うつ病のリスクでもある。したがって、動脈硬化を基盤として、身体疾患としての脳血管障害が発症し、精神疾患としてのうつ病が発症する。身体疾患と精神疾患はそれぞれがお互いのリスクとなりあうと考
えられる。

うつ病のスクリーニングに適した検査尺度として、Zung Depression Scale、Beck Depression Inventory(BDI)があり、うつ病性障害の重症度を評価する尺度として、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale:HAM—D)、標準うつ病評価(Standardized Assessment of Depression:SADD)などがある。

特に高齢者のうつ病性障害の評価には高齢者うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale:GDS)が使用される。GDS は 30 項目の質問からなる評価表であり各項目の質問に対する「はい」か「いいえ」に各 1 点を与え、11 点以上をうつ病性障害としてスクリーニングする。

認知症と思われる症状が前景に出ているうつ病が高齢者にみられることがある。抑うつ感情が目立たず、白発性の低下、意欲の減退、判断力の低下などから認知症と間違われる場合が多い。逆に認知患者で認知症状が出現する以前に、あるいは、初期段階において抑うつ状態が認められることも多いことも知られており、両者を区別することが肝要である。

高齢者のうつ病では、症状がはっきりしないことがある。抑うつ感情などのうつ病の基本症状が目立たない場合があり、微笑を絶やさず一見おだやかな表情に満ちており自分からうつ気分を訴えない者もあり、微笑うつ病(smiling depression)と呼ばれることもあるほどである。

うつ病を特徴づける感情の落ち込みが目立たないうつ病が高齢者に多いことは、高齢者うつ病の病像が非定形となりやすい理由となっている。また、高齢者うつ病の薬物療法においては、副作用が出やすいことも注意すべき点の 1 つである。高齢者に特徴的な病像を示す。

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高齢者うつ病の特徴

1)身体合併症を持つ場合が多い。
2)環境・心因からの影響が大きい。
3)病像が非定形である。
4)薬剤の副作用が出やすい。

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【高齢者うつ病の非定形病像】

激越うつ病 イライラ感・不安が強い 自殺のリスクが高い

仮面うつ病 身体症状が強い 専門医への受診が遅れる

妄想を伴ううつ病 妄想が強い 罪業・貧困・心気妄想への対応

仮性認知症 認知障害が前面に出る 認知症との区別

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1)激越うつ病
高齢うつ病患者においては、うつ病による気分の落ち込みが目立たないのと対照的に、不安や焦燥感や感情不安定が前景に出てくる場合が多い。強い不安・焦躁感が前景に出ているうつ病は高齢者には多く、極端な場合には激越うつ病の型で発症する人もある。

2)仮面うつ病
高齢者のうつ病性障害にはいくつかの特徴があるが、第 1 に身体症状の訴えが多いことがあげられる。身体的不調を訴えて身体諸科を受診する高齢者の 10~15%にうつ症状がみられる。感情のうつ症状が目立たずに、不眠、易労感、めまい、頭重、頭痛、肩こり、食欲低下・便秘・下痢などの胃腸症状、胸部痛などの不定愁訴ともいえる身体症状を訴える「うつ病」患者は多い。このような身体症状が前景に出てうつ病の精神症状が隠れているうつ病は、仮面うつ病と呼ばれる。

一般に高齢者は感情の表出が穏やかであり、自らの悲哀感や抑うつ感を語ることは少ない。また、度重なる「喪失体験」により、自己防衛的となり、周囲からの援助を求めて自ら非力感・無力感を訴えないようになっている場合も多い。このような心理が働くと、感情表現よりも身体表現としての症状が出現することになり仮面うつ病が発症するのであろう。

また、多くの高齢者が身体的不調を有しており、うつ病の発症と共に自分の身体症状に対する評価が悲観的となり、その身体症状が憎悪したと感じられるために、まず身体症状の愁訴として表現され、心理面よりも身体面にとらわれてしまうことが多い。

3)妄想性うつ病
妄想を伴ううつ病も高齢者には多い。うつ病に典型的な妄想は罪業妄想、微小妄想、心気妄想であるが、高齢者では妄想発展が多く、極端な場合には、虚無妄想が前景に出るコタール症候群を呈する場合もある。高齢者ではもの忘れ、記憶力の低下、感覚の鈍化などによる現実把握が十分にできていないことが原因となっていることも多い。

4)仮性認知症
認知症と思われる症状が前景に出ているうつ病が高齢者にみられることがある。抑うつ感情が目立たず、白発性の低下、意欲の減退、判断力の低下などから認知症と間違われる場合が多い。逆に認知患者で認知症状が出現する以前に、あるいは、初期段階において抑うつ状態が認められることも多いことも知られており、両者を区別することが肝要である。

治 療
うつ病の治療目的は疾患の自然経過よりも早い回復を促進することにある。発症前の心理的社会的要因を軽減し社会機能を以前のレベルにもどすこと、さらに再燃と再発を予防することも治療の目標である。高齢者のうつ病は一般開業医にもっとも対応が求められている疾患の 1 つであり、通常 1~2 カ月の適切な治療によりうつ病発症以前の機能レベルにもどることが期待できる。

うつ病の治療は、基本的には薬物療法と精神療法との組み合わせで行う。精神療法には多くの方法があり得るが、支持療法、家族療法、認知行動療法、力動的療法、自助療法などがある。支持的精神療法は精神科以外の一般医にも十分に行えるものであり、基本的には患者の自発的な快復を支えようとする中立的、非指示的な「聞き役」を原則とする。

家族療法は、うつ病の回復に家族のダイナミックスが作用することを期待するものであり、患者のもっとも身近な人との連帯感の形成を助長する。認知行動療法は、抑うつ気分を直接に回復させようとせずに、歪んだ思考を変えることを重視する。否定的思考を同定し、その妥当性を評価し、より肯定的な現実的思考を受け入れさせて、うつ病による機能不全に対する姿勢を修正しようとするものである。それぞれの流儀によりプログラムが用意されている。

うつ病に対して、電気けいれん療法(ECT)、断眠療法、高照度光療法なども行われる。電気けいれん療法は、高齢者の難治性うつ病に対する有効な治療法であり、約 80%に有効と報告されている。高齢者における重症の妄想、制止、混迷などを呈する場合には適用となる。以前の電気けいれん療法とは異なり、筋弛緩剤の投与下でのドースを最適化した矩形波による電気療法(modified ECT)が主流であり、比較的安全に電気けいれん
療法が行われるようになった。また、反復経頭蓋磁気刺激(TMS)によるうつ病の治療も行われるようになった。

うつ病性障害では自傷行為・自殺念慮・自殺企画の可能性を考えておく必要がある。これは高齢者においても同様である。高齢者ではあまりに極端な自傷行為は少ないが、医学的には程度の軽い自傷行為は見逃されやすい。例えば、睡眠薬を 1T服用するところを 5 T服用するなどの軽微な自傷行為についても、高齢者においてはうつ病性障害の存在を示している場合が多い。

高齢うつ病患者を支える
高齢者はもともと活動性が低く特徴的な行動パターンの把握が困難な場合も多いが、高齢者のうつ病では非定型病像を呈しやすいことを念頭に置き、その人らしくない行動パタンが見られるようになったときにはうつ病の可能性も考えることが肝要である。

高齢者のうつ病に対して、周りの人が気をつけるべきことは、うつ病を見落とさないことに尽きる。「友達が亡くなって元気がないようだ」「体が痛いといって動こうとしなくなった」などといったときに、「もしかしてうつ病では?」と考えてみることが必要である。そして、「あなたはうつ病」と決め付けるのではなく、友達を失った寂しさとか、体が痛くて困っていることとか、生活の不安など、じっくり相談しながら、「もしかしたらよくなるかもしれないから、相談してみたら?」と病院への受診を勧めることがコツである。

もちろん、「体が痛いのはうつ病のせいかもしれない」ということではなく、「眠れないなどの症状を取り除いて、少しでもつらさを和らげることができるように」と勧める。うつ病への対応は、一般的にはよく休養をとること、がんばらせないことが原則であるが、高齢者の場合、それだけでなく、体の症状のケアや生活の支援など、細かな支えが大切である。こうした周囲の支えによって、安心感が得られて回復につながる。