絶対悪

善と悪。悪を善の欠如としてとらえれば、その世界観は穏健な世界観である。
しかしこの世界にアウシュビッツが出現したのだから、絶対悪は確かに存在する。
それを考えると、悪は善の欠如ではなく、悪自体が存在として、善と拮抗しているのだ。
そうしたことは伝統的な至高善としての神の観念に反する。
『ソフィーの選択』も至高善たる神の作った世界になぜ絶対悪が存在するのかを問題とした作品である。
「アウシュビッツで、神はどこにいたのか?」との質問に、「では、人間はどこにいたのか」と問い返す。