健康保険証・マイナンバー統一反対の件 医師の反対 その理由

医療分野の健康保険証をやめて、マイナンバーカードに統一する案が浮上して、来年4月から施行と言っている。
医師の多くは反対。IT業者に支払う保守料が増える。費用に対しての効果はまったく感じられない。運用に問題がある。セキュリティに疑問がある。受付の混乱が目に見えるようである。
(1)そもそも、現在、社会保険庁や国保に請求する診療請求書を専用回線を使ってネットで送信しているのであるが、最近はトラブルが多い。データを受け付けてくれない。時間をおいて再度操作しろと言われる。締め切り直前の金曜日などになるとトラブルになることが多い。原因の明確な報告もない。素人目には、データが多すぎてパンクしているように見えるが、そうであれば対策は簡単なはずで、一体なぜトラブルが続いているのか、不明である。
(2)このような状態の中で、診療請求書を送るのと同じ回線でマイナンバー情報を送り、保険証情報を受け取るというのだから、まったくあきれる。データ処理量が多すぎて、トラブルになるという状況は現在を延長して考えれば、いかにも起こりそうである。そうなったとき、現場の混乱をどうするつもりなのか。
(3)データセキュリティの問題。ハッカーなどに対して、万全の処置がとれるのか。この点は、いろいろな言い訳が用意されていて、データは個人が特定されないものになっていて、ビッグデータとして活用できるだけで、個人情報は守られているとの話も出ている。しかしそれは、あるレベルに対しては、個人情報は洩れないが、それ以上のレベルでは、機密情報として取得可能という可能性がある。なぜなら、災害時や緊急時に、マイナンバーカードがあれば、病歴や処方が参照できて、迅速な治療が可能であるとの話もあるからだ。 セキュリティが厳しければ情報は守られるが、肝心の時に役立たない。さらに、セキュリティはどんなに厳しくしても、ときに悪用されるのが人間の社会の常である。災害緊急時のときは別として、通常時の場合、各医療機関から、過去の他院の薬歴や病名が参照できるとすれば、それだけで、悪用される恐れはある。
(4)データセンターをアマゾンやグーグルが担当するというのも、危険だ。FAGAはアメリカ政府に情報を提供していた。個人情報が筒抜けである。国家安全保障の点から問題がある。国家要人の情報だけは秘匿するのだろうか。
(5)安倍晋三は国会答弁において、「診療情報は宝の山だ」と発言した。誰にとって宝の山なのかを考えると、仲良しグループの暗躍が予想される。最悪のことは必ず起こる。
(6)マイナンバーカードには預金通帳とか税金とか不動産資産とか生命保険とか年金とか、徐々に関係づけられるはずだ。現在でも、銀行や証券会社からはマイナンバー登録の呼びかけが来ている。
(7)たとえば悪用の仕方としては、子供が3年以上通院していて、家には1億円以上の預金資産があり、土地の価格は5000万円以上、親戚の誰かに多額の借金がある、というような検索条件にして検索すれば、ある人たちにとっては有用な情報が得られる。また、妊娠が確定したけれども、その後、どこにも通院していない女性を選び出すこともできる。離婚した人間で資産1億円以上の人を検索することもできる。糖尿病で5年以上通院している人を選び出すこともできる。だからある人たちにとっては宝の山なのであろう。
(7)つい先日までは他人に見せるなと言っていたものを、こんどは医院の受付で出せという。
(8)いったいなぜいま無理にやらなければならないのか、全く理解に苦しむ。2万ポイントを付与するとCMにお金を使っている。誰にとって何のメリットがあるのか。
(9)とにかく、ひとりだけでもいいから、情報技術に詳しい人を政府部内に配置してほしい。そうすれば多分その人は中止にしなさいというだろう。
(10)検証期間を5年なり10年なりかけて、きちんとステップを踏んでもらいたい。
(11)cocoaの失敗例は分かりやすいので解説を引用しておく。中国、台湾、韓国では問題なかったのに、日本だけ出来ないのはなぜなのか。失敗が明らかになったときの対応はどうであったか。思い出しておきたい。
cocoaの作成者は、20年ほど前、エンジニアとして駆け出しの頃、日本医師会総合政策研究機構に所属して医療・介護用ソフトなどをつくっていた人とのことだ。日本医師会の医療関係のソフトを作っていた人がcocoaを作ったら見事に失敗して世間に迷惑をかけた。今度もまた迷惑になるのではないかと心配しているし、医師にとっても迷惑なことだと思っている。
ーーーーー新聞記事は東京新聞2021年2月20日
COCOA開発受注企業が事業費94%を3社に再委託、さらに2社に…不具合の原因企業「分からない」

 新型コロナウイルス陽性者との接触を知らせるアプリ「COCOA(ココア)」の開発で、厚生労働省の委託先の企業が別の3社に、契約金額の94%で事業を再委託していたことが分かった。同省は再委託比率を「原則2分の1未満」とする規定を設けているが、それを大きく超える比率で認めていた。ココアは不具合が続発。同省の調査や監督が及ぶ元請け企業の役割が小さく、原因把握が難航している。

◆厚労省の規定を大幅に逸脱
 厚労省の資料によると、同省はココアの開発業務を3億9000万円でパーソルプロセス&テクノロジー(東京)に随意契約で委託している。同社は日本マイクロソフト(同)など3社に計3億6800万円で再委託し、さらに2社に再々委託もされている。
 パーソルは感染者情報を共有するシステム「HER―SYS(ハーシス)」の委託先でもあり、その業務と連携するためココアも受注。ハーシスでも再委託比率は契約金額の93%に上り、ココアと同様に再委託先の企業が事業の大半を担う構図となっている。
◆パーソル「厚労省に承認得た」
 業務の大半が再委託されると、事業の責任が曖昧になるほか、役所の監督が及びにくくなるなどの懸念があるため、厚労省は再委託比率が50%を超えることを原則禁止している。ココアで94%の再委託を認めた理由について、田村憲久厚労相は19日の衆院予算委員会で「それぞれの得意分野があり、チームで対応していただくため」と説明した。一方、パーソルは本紙の取材に「厚労省に再委託先や再委託金額の承認を得ながら進めている」と回答した。
 ココアを巡っては、昨年9月以降、アンドロイド版で陽性者との接触を通知できない不具合があった。厚労省は問題を把握するまで4カ月かかった。iPhone(アイフォーン)の一部でも不具合が発覚している。
 厚労省の正林督章健康局長は予算委で、どの企業の業務が不具合につながったかは「現時点で分からない」と述べた。平井卓也デジタル改革担当相は「管理も含めて発注者の能力が低いことが一番の問題だ」と指摘した。
ーーーーー社説は東京新聞2021年2月12日 コロナ接触確認アプリ「COCOA」不具合放置は「お粗末」では済まない
 またか、という厚生労働省の失態だ。新型コロナウイルス陽性者との接触確認アプリ「COCOA(ココア)」で、通知が届かない不具合が放置されていた。原因究明と再発防止で信頼を取り戻すしかない。
 ココアは、陽性登録者と一メートル以内で十五分以上接触をした利用者に通知が送られるスマートフォンアプリ。政府が感染拡大防止の重点施策の一つとして昨年六月から配信を開始し、約二千五百万人が利用している。
 このうち三割強、約七百七十万人に昨年九月末から接触情報が送られていなかった、という。アプリを修正した際、一部の基本ソフトの仕様に適合しなかったとみられる。
 アプリに不具合が生じるのは仕方ない。問題は重大な欠陥が四カ月以上も放置されたことだ。
 技術者が利用するネットサイトでは、昨年十一月にココアのプログラムミスが指摘されていたという。年明けには「家族が感染したのに通知が来ない」などとSNSに投稿されるようになり、一月下旬になってようやく、業者から厚労省に不具合が報告された。
 厚労省側が気付かなかったのはアプリの開発も保守管理も業者に丸投げしたからではないか。今月中旬の復旧を目指すというが、業者の選定、監督に問題はなかったのか、徹底的な検証が必要だ。
 何より、ココアの機能を信じてきた利用者を裏切ったことは深刻だ。人口の約二割の普及率は十分ではなく、さらに普及拡大が必要な中での背信行為は痛手だろう。
 個人情報の収集、利用に議論はあるものの、韓国や台湾では感染対策へのアプリ活用に一定の支持があり、効果も得られている。
 ココアが正常に機能し、陽性者との接触が通知されていたら、大都市圏中心に緊急事態宣言が再発令された要因となった年末年始の感染急増も、一定程度は防げたのかもしれない。
 菅義偉首相は、厚労省の対応を「お粗末だ」と認めたが、問題の深刻さを理解しているのか。徹底した原因究明と対策を講じようとの意欲は見えない。
 今月中旬から予定されるコロナワクチン接種では、大規模な個人情報管理が必要となる。ココアを巡る対応を見ると政府のデジタル政策は信頼が置けるのか疑問が生じる。
 「国全体のデジタル化」は、菅政権にとって重要政策のはずだ。国民の命と暮らしを守るためにデジタル技術をどう活用するのか、菅内閣全体でいま一度気を引き締める必要がある。
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というわけで、丸投げ・中抜きして下請けに流し、結局、「ココアは不具合が続発、原因把握が難航」していたわけだ。

健康保険証・マイナンバー統一の件も同じ臭いがするので、医師の皆さんはこぞって反対しているのである。
(12)少なくとも、自分の情報について、病名や診断日などについて、マイナンバーカードで調べられないように、登録を拒否する自由が認められるべきである。
(13)厚労省は医院にマイナンバーカード読み取りの機械を普及させるため、保険点数を少しだけつけて誘導した。ところが、患者さんはそれを見つけて、「いつもより高いのはどうしてか」と質問した。マイナンバーで受付すると高くなる、保険証なら今まで通りと説明した。医院も患者もいいことはない。健康保険証がマイナンバーの無理な普及の道具に使われた形だ。医師としては迷惑千万である。
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