採録
【教育・その他】『ファインマンによる、科学と似非科学を区別するシンプルなテクニック』ScienceAlert 2016/4/14 【似非科学】
2016年04月15日 ワクチン 反ワクチン運動 気候変動懐疑主義 気候変動 Deepak Chopra 似非科学 反科学 エセ科学 スピリチュアル Richard Feynman 科学コミュニケーション ScienceAlert
ペースの速いソーシャルメディアニュースの世界で、あなたのニュースフィードにポップアップしてくるもっともらしい響きの見出しのうち、どれが科学的に適切なものであり、またどれが疑似科学的たわごとと変わらない程度のものなのか、常に判断しなければいけないというのは骨の折れることである。
問題をさらに複雑にしているのは、反ワクチン派や、気候変動否定派のものたちは、人々を引き込むため科学的用語を利用するということだ。また、懐疑思考的研究者たちによって、人は「深遠な響きのデタラメ(bullshit)」に驚くほど簡単にはまりやすいことをが示されている。たとえば、「ウェルビーイング(福利)は探求を必要とする。使命を横断するにはその一つになることだ」のようなディーパック・チョプラの知的な響きの言葉は、実際には全く何の意味も含んでいない。
しかし、今日においてフィクションと事実を区別することは、その困難さと同じく、かつてないほどに重要なこととなっている。
では、科学の上級学位をもたないものが、事実とそうでないものをどう判別したらよいのだろうか?さかのぼること1966年、理論物理学者リチャード・ファインマンは、驚くほど単純で、今日かつてないほど適切な方法を考え出していた。
すべきことは、なにか知的な響きのものを見聞きしたときは、科学的な通語や専門用語や用いず、通常の言葉に翻訳しようとしてみること―もしくは、いっそ本人にそのように説明させること―である。それでちゃんと意味が通っているのか見るのである。
たとえば「複数のワクチンの同時投与が免疫系を弱体化させるため」予防接種は自閉症の原因となる、という文句はかなり印象的に聞こえるかもしれない。しかし、これを一般用語で説明できるだろうか?つまり、死んだウィルスの断片を―その生きた形態に遭遇した場合に身体が認識し攻撃するように―注射することが、どのように広範囲の行動変化をもたらすか説明できるだろうか?できないだろう?そのはずだ。
【医療・認知】『MMRワクチンと自閉症に関連性なし,95,000人の子を対象とした研究結果』ScienceAlert 2015/4/22
50年前、ファインマンは気候変動否定派や反ワクチン派について語っていたわけではなく、科学教育について述べていた。1996年の全米科学教師協会でのスピーチをみると、彼は将来の教育者に、ものの名前を知っていることと、それを真に理解していることの違いについて伝えようとしていた。
彼は初級の科学本について語っている。その本はゼンマイ式のオモチャのイヌや、本物のイヌ、そしてバイクなどの画像を生徒に見せた後、「これは何で動いているでしょう?」と尋ねる。
これは科学の基礎について議論を始める方法としてはとても興味深い方法だが、彼は教師用の本に書かれている答えではなく、すべての問いに対し単純に「エネルギーによって動いている」と記した。
「エネルギーはとても捉えがたい概念だ。正しく理解するのはとてもとても難しい。つまり、エネルギーという用語を正しい意味で用い、エネルギーという発想を用いて何かを正しく演繹することが難しいという意味である。これは一年生のレベルを超えている。それは「神が動かしている」とか「魂が動かしている」もしくは「運動性が動かしている」というのと、負けず劣らずである。(エネルギーがそれを静止させると言っても良い)」と彼は述べている。
彼は代わりに、教師は複雑な用語に頼るのではなく、科学的知識のない一般の人が行うような表現で質問に答えるべきであると提案している。たとえば、オモチャのイヌが動くのはネジを巻き、それが元に戻ることでギアを回転させるためである、というようにである。
そして彼は、科学コミュニケーションの歴史で最良のアドバイスの一つを提示した:
「私は結局、あなたがアイディアを教えたのか、それともただ定義を教えただけなのか判定する方法を見つけた。こうやって確かめるのだ ‘あなたが学んだばかりのその新しい用語を使わずに、今学んだことを自分の言葉で言い換えてくれ。’エネルギー’という言葉を使わずに、犬の運動について今学んだことを説明してくれ。’ できないなら、あなたは科学について何も学んでいなかったということだ 」
科学教育は置いておいても、BigThinkでサイモン・オクセナムが説明するよう、ファインマンのアドバイスは誰かの主張を検証するのにも等しく役に立つ:
もし誰かが何かを平易な言葉で説明できないとき、彼ら自身が本当に理解できているのか疑うべきです。もし問題となっている人物が非専門家である聴衆に対して、脈絡を外れた専門的な用語を用いてうわべだけのコミュニケーションをとっているとしたら、まず口にすべき疑問は「なぜ?」ということです。ファインマンの言葉をすれば、”形だけマネて、科学と呼ぶことはできても、それは似非科学”なのです」
これは驚くほどシンプルな概念で、そして科学コミュニケーションに携わる我々にとっては何年もかけて叩き込まれるものだ。しかし、それを現実世界に持ち出すと、a)意味を成すかどうか、そしてb)それを理解しているかどうかを確かめるために、何かを平易な言葉で言い直すことを試みるという単純なテクニックは、デタラメ(bullshit)を切り落とすための驚くほど強力な道具となる。試してみることを強く推奨する。
ファインマンが自身のアドバイスをどれだけ厳格に実践していたか知りたかったら、この約20年後に撮影されたインタビューを見てみるとよいだろう。この中でファインマンはBBCのジャーナリストに磁石がどのように作用するか説明することを拒んでいる。これはインタビュワーの馴染みある言葉で説明することが不可能だからだ。これは高度な用語を用いない生き方(no-jargon life)へのコミットメントである。