ペップトークは日常でも使える「人を励ます」話し方
アメリカでペップトークが日常でも使われるようになった背景は、言語が多様な人種の坩堝であるがゆえ、シンプルにわかりやすく伝える必要があったからです。
たとえば、アメリカ大統領の演説などは、大衆にわかりやすい言葉で、なおかつ彼らを導くものでなければなりません。また、ドラマなどを観ていても悩んでいる相手に対して、とても論理的に元気づける会話が登場します。
このペップトークは、実にシンプルな構造で話が組み立てられています。
(1)受容(事実の受け入れ)
(2)承認(とらえかた変換)
(3)行動(してほしい変換)
(4)激励(背中のひと押し)
(1)の「受容」では、相手の感情や状況をいったん受け入れることから始めます。緊張や不安、悩んでいるとき、その人の感情を酌み取ると心にスペースができます。そうしたスペースができると、相手が言っていることを受け入れる余裕ができます。
「お前たち、よく決勝戦まできたな。相手は全国大会の常連校だ」(サッカーの県大会決勝で)
「さっちゃん、手が震えているのね」(ピアノの発表会の前に)
「昨日は緊張であまり眠れなかったみたいだね」(大切な講演会の前)
「いま、会社の売り上げは前年比マイナス10%になっている」(経営者が社員に)
このように、いま相手の置かれている状況や感情を受け入れさせるのです。
次に(2)の「承認」で、そうした状況や感情をプラスの表現に転換します。
「昨日は緊張であまり眠れなかったみたいだね(受容)。それは君が本気で講演会を成功させたいと思っている証拠だよ(承認)」(大切な講演会の前)
「いま、会社の売り上げは前年比マイナス10%になっている(受容)。この状況は、いままでのやり方を見直し、業務をシンプル化するチャンスである(承認)」(経営者が社員に)
この時点で、相手はいまを受け入れ、それをプラスの感情へと変えていきます。
そして、(3)の「行動」ではまさにしてほしい行動を促します。
「ベストを尽くそう」「自分たちの力を出しきろう」「仲間を信じてパスを回そう」(試合に勝つために……)
「落ち着いて最後まで問題を読もう」「できそうな問題から解いていこう」(試験に合格するために……)
「お客様の悩みに寄り添って話を聞こう」(お客様から契約をいただくために……)
いま、その人にふさわしい言葉を
そして、最後(4)の「激励」は、相手を送り出す言葉です。
ここは相手の性格を考えながら、その人にふさわしい言葉を投げかけます。
「さあ、行ってこい!」「思いっきり暴れてこい!」「大丈夫、君ならできる!」「笑顔でいこう!」「一緒に頑張ろう!」「Yes, we can !」「何があっても助けに行くから!」「みんなで応援しているからね!」「ゴールで待ってるよ!」
以上の4つを組み立てるだけで、相手のやる気を引き出したり、相手を元気づけたりすることができるのがペップトークの特徴。それも1分くらいの話でまとめられるため、相手も話を十分に理解し、本来持っている力を発揮できるのです。