“VHSテープ全盛の時代の米国のレンタルビデオ店での話。「見終わったあとはテープ巻き戻してから返却してください」とシールを貼っておいても、巻き戻さずに返却する人が多く、店としては頭を抱えていた。そのまま次の客に貸してしまうと次の客の気分が悪くなるし、店でいちいち巻き戻していては手間がかかって仕方がない。
これを「マナーの問題」としてしまうと、ほぼ解決不可能な難問になってしまうが、この店では思い切ってルールを変更してしまうことにより、この問題をみごとに解決したのだ。VHSテープに貼り付けるシールの文言を「このテープは一度最初まで巻き戻してからご覧ください。返却時は巻き戻さなくても結構です」に変更しただけだ。
こうやって基本ルールを変えただけで、借りたばかりのテープが巻き戻っていなくても気分を害する客はいなくなったし、逆に巻き戻してあると「得をした気になる」ようになったのである。注目すべきは、誰も行動パターンを大きく変えたわけでもないのに、皆の気分が良くなった点である。”