岩波新書赤版596『日本語練習帳』大野晋1999。
尊敬語を作る時に、漢語に御(ご)をつける方法がある。この時、心配、研究、依頼などは御心配、御研究、御依頼などとできるが、前進、図示、護衛、読破などについては御をつけない。濁音ではじまる漢語の上には一般には御をつけない。例外として、「御学友」がある。
濁音で始まる場合は御をつけないという規則は意外だった。どんな理由でこんな規則ができたのだろう。不思議だ。
太宰治の『斜陽』の登場人物の言葉遣いについて、志賀直哉が批判した。それに対して、太宰が『如是我聞』で反論を書いたこと。これを紹介して、太宰と志賀の作家としての本質・根本にふれる応酬と大野晋は書いている。
志賀直哉が前後すぐの頃、フランス語を国語として採用すべきだと主張したことについて、このようなことを語るとは、志賀直哉は文章職人に過ぎなかったと大野晋は書いている。
志賀直哉は以前、森有礼が英語を国語に採用する考えを示したとき断行していたら、日本国にとってどんなに役立ったかとも書いて悔やんでいる。