「魯迅評論集」竹内好編訳、岩波文庫。刊行は1981年。

「魯迅評論集」竹内好編訳、岩波文庫。刊行は1981年。
元の本は1953年に発行。魯迅は1936年に没している。それまでに発表されたものだ。内容について深く理解するには当時の政治状況や文学状況の知識が必要だろうが、読みやすい文章だし、たとえ話も短く添えられていて、一応の理解としては、容易だろうと思う。
翻訳は竹内好。竹内好自身の随筆文はほかにまとめられている。
漢文や中国語を主に勉強して文学に携わる人は日本でも有力な流れとなるだろう。高橋和巳、吉川幸次郎、竹内好、武田泰淳、白川静など。漢字の研究で有名な人にも藤堂明保など、何人もいる。
魯迅の中国語原文の密度を想定して考えると、日本語の訳文は、ゆるくしたカレーライスのようなものだろうかなどとも思う。何度も推敲していたらしい。そのおかげで理解しやすくて読者としてはありがたい。
太宰治による魯迅伝記小説『惜別』(一九四五) があり、松本清張にアンチ魯迅の私小説「父系の指」(一九五五)がある。