「ヨブへの答え」C.G.ユング、1952、林道義訳、1988、みすず書房

「ヨブへの答え」C.G.ユング、1952、林道義訳、1988、みすず書房。
訳者による解説が分かりやすい。
「神の人間化」「人間の神化」「神が人間に追い越される」「マリア被昇天」などがキーワード。
神も変化する。それは人間の集合的無意識が時代によって変化するからである。
神を無意識、人間を意識と二項対立させて考えているのは少し違和感がある。
キリスト教聖書という楽譜をユングが独自の解釈で演奏してみせた大演奏。

精神分析系統の発想としては確かに目を見張る大したものだと思うが、結局、素朴な根本の疑問に何も答えていないと思う。なぜ義人が苦しむのか。それに対してさらに宗教的な比喩を重ねるのみで、何も答えていない。精神分析はそういうものだけれど、つまりは何にもならない。素朴で真摯な宗教者が知りたいのはそういうことではない。