いかに短い時にしても「私は存在した」。その事実を変えることはできない。

なにものも、私が生きたという事実をあらためることはできない。いかに短い時にしても「私は存在した」。人間存在の破壊されえぬこと(indestractivility)。

そうですね。物質としては変化してしまうでしょうが、それが存在した期間は、日光を受けていたとすれば、その反射として周囲に電磁波を発していたはずで、それは宇宙空間にきわめて微弱ではあるものの存在し続けるわけです。だから、もし宇宙の時間を逆に回転させたとすれば、その物質は再生できるんでしょうね。その意味で、人間の記憶とか、神の記憶の中にではなく、宇宙空間の電磁波として空間を拡散し続けている。それは消えない。宇宙空間が記憶装置である。

歴史を変更しようとする人がやっていることは、歴史を変更することではなく、歴史を変更しようとした歴史を新たに書き加えているのだ。その履歴は消えない。