精神病の症状の二重性
精神病の状態にある患者の呈する精神症状は、ひとつは脳の機能異常としての精神症状であるが、それに重なるかたちで、反応としての神経症症状(反応性精神症状と言った方が現在では分かりやすい)も観察される。その区別は容易ではない。
たとえば、虫歯になったとする。歯の痛みがあり、気分も滅入る。その場合の、歯の症状と、反応性の精神症状は区別しやすいし、当然のものと納得できる。
脳の機能異常としての精神症状があり、それがたとえば幻聴や被害妄想である。それに対して、こんなことが起こるなんて、どうしてしまったのだろう、これからの人生はどうなるのだろうと考えて、悲観的になるとしたらそれが反応性精神症状である。
うつ病の場合は、精神病としての不安、抑うつ、意欲低下がみられるのに加えて、反応性精神症状として悲観的思考などが見られる。この場合には、区別がしにくい。
たとえば強迫性障害などの不安性障害の系列の病気でも、そのことがあって周囲とうまくいかなくなってイライラしたり気分が落ち込むという場合は、ある程度は反応性精神症状である。その場合も、くっきりと区別できるわけではない。
反応性精神症状はその人の性格や生育とも関係する。だから人によって反応の仕方が違う。人に過度に依存的になったり、人や環境に対して他罰的になったりもする。
たとえば過剰な攻撃性に悩むとして、それが器質性障害であるのか、反応性精神症状であるのか、それを手がかりとして治療を考えることができる。
うつ病であるが、極端に治りが悪い場合などは、反応性精神症状が長引いているのではないかと考えて対処する。