精神病の診断検査のための特許書類の例

以下の文章は精神病の診断に役立つと主張する検査の特許書類である。ここに記録する理由は、前置き段階で精神病の定義や診断をでたらめなコピペをしているらしいことが興味深かったから。

https://patents.google.com/patent/JP2009516156A/ja

精神病性障害を診断及びモニタリングする方法及びバイオマーカー
Abstract
本発明は、被験体において精神病性障害を診断又はモニタリングする方法に関し、試験生体サンプルを被験体から準備すること、1つ又は複数のスペクトルを与えるために当該試験生体サンプルでスペクトル分析を行うこと、及び1つ又は複数のスペクトルを1つ又は複数の対照スペクトルと比較することを含む。本発明は、統合失調症又は双極性障害などの精神病性障害を診断又はモニタリングする方法にも関し、試験被験体から採取した生体サンプルに存在する1つ又は複数のバイオマーカーのレベルを測定することを含み、当該バイオマーカーがトランスサイレチン、ApoA1、VLDL、LDL、及び血漿タンパク質等の芳香族種から成る群から選択される。本発明は、本発明の方法を実施するためのセンサー、バイオセンサー、多重検体パネル、アレイ、アッセイ及びキットにも関する。

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というタイトルとアブストラクトに続き、しばらく精神病とは何かについて記述があり、さらに検査の現状についての解説がある。それが以下の部分。ここを記録しておきたいと思った。これが終わってから、特許の中身の説明がある。2005年の話で、その後特に話題にもならないので特許の中身はあまり興味がない。他人に利用されないように一応特許をとっておこうというような話だと思われる。以下、引用が長いので、前半の概説の部分だけに注目してもらえばよい。

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Description
本発明は、バイオマーカーを用いて精神病性障害、特に統合失調症(及び双極性障害)を診断又はモニタリングする方法に関する。バイオマーカー、及びバイオマーカーが利用される方法は、診断を補助し、また精神病性障害の発症及び進行を評価するのに用いることができる。本発明は、臨床スクリーニング、予後の評価、治療の評価における、並びに薬物スクリーニング及び薬物開発のためのバイオマーカーの使用にも関する。
精神病は、重度の精神疾患の症状である。精神病は、任意の特定の精神状態又は身体状態に排他的に関連されるとは限らないが、精神病は、特に統合失調症、双極性障害(躁うつ病)及び重度の臨床的うつ病に関連される。精神病は、基本的な知覚過程、認知過程、情動過程及び判断過程における障害を特徴とする。精神病エピソードに悩む個体は、幻覚(多くの場合、幻聴又は幻視)を体験し、偏執的又は妄想的信念を抱き、人格変化を体験し、支離滅裂な思考(思考障害)を示すことがある。これは、場合によっては行動の異常性又は奇妙性に対する洞察の欠如、社会的相互作用の困難及び日常生活の活動を行う際の機能障害のような特徴を伴うことがある。
精神病は、脳損傷の症例で見られることが珍しくなく、薬物使用後、特に薬物過剰摂取又は慢性使用後に起こる場合があり、或る特定の化合物は、精神病を誘導する可能性がより高い場合があり、個体によっては、他者よりも高い感受性を示す場合がある。幻覚薬の直接的な影響は、薬物が身体から代謝される場合にそれらが和らぐ限りは、通常精神病と分類されない。慢性心理的ストレスもまた、精神病的状態を促進させることが知られているが、正確なメカニズムは不明確である。任意の他の精神疾患の非存在下でストレスにより誘発される精神病は、短期反応精神病として知られている。したがって、精神病は、行動及び体験の複雑な群に関する記述用語である。統合失調症の患者は、長期間精神病を伴わないことがあり、双極性障害又はうつ病の個体は、精神病を伴わない気分症状を有することがある。
幻覚は、外部刺激の非存在下での知覚として定義される。精神病的幻覚は、五感のいずれかで起こり、ほぼ任意の形態を取る可能性があり、単純な感覚(例えば、光、色彩、味、臭い)からより意味ある体験(例えば、完全に形成された動物及び人間を見ること及びそれらと接触すること、声を聞くこと並びに複雑な触感)までを包含し得る。幻聴、特に声を聞くという体験は、精神病の一般的且つ多くの場合顕著な特徴である。幻覚の声は、人について又は人と話すことがあり、別々の人格を伴う数名の話し手を包含することもある。幻聴は、それらが軽蔑的であるか、命令調であるか、又は心が捕らわれている場合に特に苦痛を伴う傾向にある。
精神病は、妄想的又は偏執的信念を包含する場合があり、第1の型及び第2の型に分類される。第1の妄想は、不意に生じ、正常な精神過程の観点では理解できないとみなされるのに対して、第2の妄想は、人の過去又は現在の状況により影響を受けていると理解されることがある、即ち、「現実の」状況の妄想的解釈を表す。
思考障害は、意識的思考に対する根本的な混乱を表すものであり、主として話すこと及び書くことの内容並びに形態に対するその影響により分類される。罹患した人はまた、話すことへの圧力(絶え間なく迅速に話すこと)、発想の脱線又は飛躍(主題の途中で又は不適切に切り換えること)、思考途絶、ろれつが回らない状態(rhyming or punning)を示し得る。
精神病エピソードは、個体間で継続期間が異なり得る。短期反応精神病では、精神病エピソードは、一般的に特異的なストレスの多い生活上の出来事に直接関連されるため、患者は、通常2週間以内に自然に正常な機能を回復する。幾つかの稀な場合では、個体は、何年にもわたって本格的な精神病の状態が続くか、或いはほとんどの場合で起こる弱い精神病的症状(例えば、低度の幻覚)を有する場合がある。
短期精神病エピソードを患う患者は、例えば統合失調症の結果として精神病である人と同じ症状の多くを有することがあり、この事実は、精神病が主として脳内の幾つか特異的な生体系における崩壊であるという概念を支持するのに用いられている。
統合失調症は、人口の最大1%が罹患する主要な精神病性障害である。統合失調症は、男女共に同様の有病率で見られ、多様な文化及び地理的領域全体にわたって見出される。世界保健機関は、統合失調症が身体障害の世界で4番目に主要な原因であり、総DALY(障害調整生存年)の1.1%及びYLD(障害生存年数)の2.8%を占めることを見出した。統合失調症の経済費用は、1991年では190億USドルを超え、米国における全ての癌の総費用よりも大きいと推定された。早期の診断及び統合失調症の有効な治療は、予後を改善させて、この疾病に関連する費用を低減させるのを補助することができる。
統合失調症の臨床的症候群は、陽性症状(幻覚、妄想、思考の解体及び奇妙な行動)、陰性症状(自発性の損失、感情面での経験及び表現の制限、並びに快楽能力の低減)及び個体間での広範な変動を伴う認知障害を含む個々の臨床的特徴を含む。単一の症状が統合失調症に特有であるのではなく、且つ/又はあらゆる場合に存在するのではない。臨床的症状の均質性の欠如にもかかわらず、統合失調症の現在の診断及び分類は、依然として患者により示される臨床的症状に基づいている。これは主として、統合失調症の原因論が依然として未知であり(実際、ほとんどの精神病の原因論が依然として不明確である)、原因論に基づく分類がいまだに実現できていないためである。統合失調症の臨床的症状は、多くの場合他の神経精神障害及び神経発達障害で観察される症状に類似している。
統合失調症の被験体により示される複雑で多種多様な症状及び他の精神障害に対するそれらの類似性に起因して、統合失調症の現在の診断は、患者の家族歴、個人歴、現在の症状(精神状態検査)及び他の障害の存在/非存在(鑑別診断)の複雑な臨床検査/問診に基づいて行われる。この評価により、「最も見込みある」診断を確立することが可能となり、初期治療計画につながる。統合失調症と診断されるには、患者(少数の例外を除く)は、少なくとも6ヶ月間精神病的「現実の喪失(loss-of-reality)」症状を有し(DSM IV)、また正常に機能することがより困難になることを示すものとする。
1992年に世界保健機関により出版された精神及び行動の障害のICD−10分類(The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders)は、精神衛生状態を診断するのに欧州の精神科医により最も一般的に使用されるマニュアルである。マニュアルは、詳細な診断ガイドラインを提供し、様々な形態の統合失調症:統合失調症、妄想型統合失調症、破瓜型(hebrephrenic)統合失調症、緊張型統合失調症、識別不能型統合失調症、統合失調症後抑うつ、残遺型統合失調症及び単純型統合失調症を規定する。
米国精神医学会(Washington, D.C.)により1994年に出版された精神障害の診断及び統計マニュアル第四版(The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders fourth edition)(DSM IV)は、精神衛生問題を類別及び診断するための英国及び米国の両方における医療従事者用の権威ある参考ハンドブックであるとされている。これには、統合失調症、双極性障害及び関連精神病性障害を含む精神衛生障害の診断基準、亜型、関連する特徴並びに識別診断に関する基準が記載されている。
統合失調症に関するDSM IVの診断基準
A.特徴的な症状:以下のうちの2つ(又はそれ以上)がそれぞれ1ヶ月(又は首尾よく治療される場合にはそれ未満)の期間の相当部分に存在する:妄想、幻覚、解体した会話(例えば、頻繁な脱線又は支離滅裂)、極めて解体した行動又は緊張病性行動、陰性症状、即ち感情鈍磨、失語又は自発性欠如(avolition)。妄想が奇妙であるか、又は幻覚が人の行動又は思考に関して実況解説をし続ける声、或いは互いに会話している2つ以上の声から構成される場合には、唯一の基準A症状が必要とされる。
B.社会的/職業的機能不全:障害の発症から相当部分の時間、仕事、対人関係又はセルフケアのような機能の1つ又は複数の主要な領域が、発症前に達成されたレベルを著しく下回る(或いは、発症が幼児期又は思春期である場合、対人的、学問的又は職業的な達成の予測レベルを達成することができない)。
C.持続期間:障害の連続的な徴候が、少なくとも6ヶ月間存続する。この6ヶ月の期間は、基準Aを満たす症状(即ち、活動期の症状)の少なくとも1ヶ月(或いは首尾よく治療される場合にはそれ未満)を包含しなくてはならず、前駆症状又は残留症状の期間を包含し得る。これらの前駆期間又は残留期間中、障害の徴候は、単なる陰性症状又は減衰された形態で存在する基準Aに列挙される2つ以上の症状(例えば、異様な信念、異常な知覚体験)を呈し得る。
D.統合失調性感情障害及び気分障害の排除:精神病的な特徴を伴う統合失調性感情障害及び気分障害は、(1)大うつ病エピソード、躁病エピソード又は混合エピソードのいずれかが活動期症状と同時に起こっていないため、或いは(2)気分エピソードが活動期症状中に起こる場合に、それらの総持続期間が活動期間及び残留期間の持続期間に対して短いため除外される。
E.物質/一般的な医学的状態の排除:障害は、物質(例えば、薬物乱用、投薬)の直接的な生理学的影響又は一般的な医学的状態、いわゆる「器質性」脳障害/症候群に起因しない。
F.広汎性発達障害との関係:自閉症又は別の広汎性発達障害の病歴が存在する場合、統合失調症のさらなる診断は、顕著な妄想又は幻覚も少なくとも1ヶ月間(或いは首尾よく治療される場合にはそれ未満)存在する場合にのみ為される。
統合失調症亜型
1.妄想型:以下の基準が満たされる統合失調症の型:1つ又は複数の妄想(特に、被害内容)を伴う没頭、又は頻発する幻聴。以下のいずれも顕著ではない:解体した会話、解体した行動又は緊張病性行動、又は鈍磨若しくは不適切な感情)。
2.緊張型:臨床像が以下の少なくとも2つを特色とする統合失調症の型:強硬症(ろう屈症を含む)により明らかなような運動不動性又は昏迷過剰運動活動(これは、明らかに無意義であり、外部刺激により影響を受けない)、極度の否定主義(全ての指示に対する明らかに動機のない抵抗又は移動させようとする試みに対する硬直した姿勢の維持)又は無言症、ある態度をとること(不適切な態度又は奇妙な態度を随意にとること)により明らかであるような随意的な動作という奇癖、常同運動、顕著な癖、或いは顕著な顔をゆがめる反響言語又は反響動作。
3.解体型:以下の基準が満たされる統合失調症の型:以下の全てが顕著である:解体した会話、解体した行動、鈍磨又は不適切な感情。基準は、緊張型を満たすものではない。
4.識別不能型:基準Aを満たす症状が存在するが、基準は、妄想型、解体型又は緊張型を満たすものではない統合失調症の型。
5.残遺型:以下の基準が満たされる統合失調症の型:顕著な妄想、幻覚、解体した会話及び極めて解体した行動又は緊張病性行動の欠如。陰性症状或いは減衰された形態で存在する統合失調症に関する基準Aに列挙される2つ以上の症状(例えば、異様な信念、異常な知覚体験)の存在により示されるように、障害の継続した徴候が見られる。
統合失調症関連特徴
統合失調症に関連する特徴としては、学習上の問題、自発運動の抑制、精神病、多幸気分、抑うつ気分、身体上の又は性的な機能障害、活動亢進、自責心又は脅迫観念、性的異常行動、異様な/変わった人格又は不審な人格、心配性又は恐がり又は依存的な人格、劇的又は気まぐれ又は反社会的な人格が挙げられる。
多くの障害は、統合失調症に類似するか、又はさらには統合失調症と同じ症状を有する:一般的な病状、せん妄又は認知症に起因する精神病性障害、物質誘導性精神病性障害、物質誘導性せん妄、物質誘導性持続性認知症、物質関連障害、精神病的特徴を伴う気分障害、統合失調性感情障害、特定不能の抑うつ障害、特定不能の双極性障害、緊張病性特徴を伴う気分障害、統合失調症様障害、短期精神病性障害、妄想性障害、特定不能の精神病性障害、広汎性発達障害(例えば、自閉性障害)、解体した会話(意思疎通障害由来)及び解体した行動(注意欠陥/多動性障害由来)を組み合わせた幼児期症状(presentation)、統合失調症性障害、統合失調症的人格障害及び偏執性人格障害。
DSM IV 躁うつ病/双極性情動障害(BD)に関する診断カテゴリー
双極性疾病のわずか2つの亜型は、それら自体のDSMカテゴリー、即ち双極性I及び双極性IIが付与されるのに十分明確に規定されている。
双極性I:この障害は、躁病エピソード:躁うつサイクルの「高(high)」を特徴とする。概して、この躁状態期間後に、抑うつ状態の期間が続くが、双極性I個体によっては、大うつ病エピソードを経験しない場合がある。躁病症状又は軽躁病症状及びうつ病症状が同時に起こる混合状態もまた、双極性I患者に頻繁に見られる(例えば、躁病の思考の早まり(racing thoughts)を伴ううつ病)。また、不快性躁病は一般的であり、これは、怒り及び興奮性を特徴とする躁病である。
双極性II:この障害は、大うつ病エピソードが躁病のより穏やかな形態である軽躁病のエピソードと交互に起こることを特徴とする。軽躁病エピソードは、あまり崩壊的でない形態の躁病であり、躁病の低レベルの非精神病性症状(例えば、活力の増大又は通常よりも高揚した気分)を特徴とし得る。軽躁病エピソードは、日常的に活動をする個体の能力に影響を及ぼし得ない。軽躁病に関する基準は、それらのより短い持続期間(1週間ではなくて少なくとも4日)及びより穏やかな重篤性(顕著な機能障害、入院又は精神病性特徴なし)のみが、躁病に関する基準と異なる。
うつ病及び躁病状態の交互のエピソードが2年間続いて、且つ大うつ病又は躁病エピソードに関する基準を満たさない場合、診断は、双極性情動障害のあまり重篤でない形態である気分循環性障害と分類される。気分循環性障害は、2年にわたって診断され、安定期で隔てられ、短期間で軽躁病とうつ病症状とが頻発することを特徴とする。
急速交代型は、個体の気分が、間に安定期をあまり有さずに又は安定期を全く有さずに、間断なく抑うつ状態から軽躁病又は躁病へ変動する場合に見られる。或る年に、大うつ病エピソード、躁病エピソード、混合エピソード又は軽躁病エピソードに関する基準を満たす4回以上のエピソードを有した場合には、人は急速交代型を経験すると言われている。急速交代型の人々によっては、月1回、週1回又はさらには毎日、極性の交代を経験し得る人もいる(場合によっては、超急速交代型と呼ばれる)。
躁病、うつ病、混合気分又は軽躁病の症状が、甲状腺疾患又は卒中のような内科的障害により直接的に引き起こされる場合、現在の診断は、一般的な病状に起因する気分障害である。
躁病気分が、抗うつ薬であるECTにより、或いはストリートドラッグ(street drug)を使用している個体により引き起こされる場合、診断は、躁病特徴を伴う物質誘導性気分障害である。
双極性IIIの診断は、自発的ではなくて、抗うつ薬投薬を行った結果として起こる躁病エピソードを類別するのに使用されている。紛らわしいことに、双極性IIIの診断はまた、大うつ病を伴わずに個体が軽躁病又は気分循環症(即ち、あまり重篤でない躁病)を経験する状況でも使用されている。
躁病
躁うつ病は、2つの別個の且つ正反対の気分状態から構成され、抑うつ状態が躁状態と交互に起こる。DSM IVは、障害が躁病と分類される前に満たさなくてはならない多数の基準を示している。第1の基準は、個体の気分が高揚されているか、開放的であるか、或いは興奮性でなくてはならないことである。気分は、安定期中の個体の通常の感情状態と異なる気分でなくてはならない。相当な期間にわたって顕著な変化が存在しなくてはならない。人は、非常に高揚した状態となり、誇大な発想を有さなくてはならない。人はまた、非常にいらいらするようになる場合があり、同様に態度が「傲慢」であるように見える場合がある。躁病に関する第2の主要な基準は、以下の症状のうち少なくとも3つが相当な度合いで存在した状態でなくてはならないことを強調する:自尊心の誇張、睡眠欲求の減少、多弁の増大、観念の奔逸或いは競合、注意散漫、目標指向活動の増大。喜びをもたらすことができるが、破滅的な結末(性的な事件及び過剰な浪費)を有する場合がある活動における過度の関与。DSM IVにおける躁病に関する第3の基準は、気分の変化が、個体の業務遂行又は日常的な社会活動に参加する能力又は他人との関係に影響を及ぼすのに十分顕著でなくてはならないことを強調する。この第3の基準は、躁病と軽躁病との間の違いを強調するのに使用される。
うつ病
DSM IVは、大うつ病が臨床上規定される多数の基準が存在することを明言している。状態は、少なくとも2週間明白でなくてはならず、以下の症状のうち5つを有さなくてはならない:ほとんど毎日、ほぼ一日中の抑うつ気分、ほとんど毎日、ほぼ全ての活動における興味又は喜びの損失、体重及び食欲の変化、睡眠障害、身体活動の減少、疲労及び活力の損失、倦怠感又は過剰な罪悪感、乏しい集中力、自殺願望。
抑うつ気分及び日常活動における興味の損失は共に、大うつ病を特徴付ける5つの症状のうちの2つとして明白でなくてはならない。躁うつ病の抑うつ気分を患う個体と大うつ病を患うものの症状間を識別することは困難である。気分変調は、単極性うつ病よりもあまり重篤でないうつ病であるが、気分変調はより持続的であり得る。
精神病性障害の正確な診断を達成するのに現在必要とされる長期にわたる過程は、適切な治療の遅延を引き起こすおそれがあり、中期から長期の疾患の転帰に重大な影響を持つ可能性が高い。客観的な診断方法、試験及びツールの開発は、類似した臨床症状を伴う精神病間を識別するのを補助するのに緊急に要される。統合失調症及び/又は双極性障害のような精神病性障害に関する客観的な診断方法及び試験は、疾病の間に個体をモニタリングすること(治療応答、コンプライアンス等)を補助し、また予後を決定する際、並びに薬物スクリーニング及び薬物開発用のツールを提供する際に有用であり得る。
残念なことに、現在のところ、統合失調症又は双極性障害のような精神病性障害に関する標準的で高感度で特異的な試験が存在しない。
統合失調症診断用に現在開発中の生化学試験の1つは、異常なアラキドン酸代謝に起因して、幾つかの統合失調症患者においてナイアシン皮膚試験に応答することができないという観察に基づくナイアシン皮膚紅潮試験である。しかしながら、この試験の特異性及び感受性は、23%〜87%の範囲で研究間の極端な不一致を示し、この試験の信頼性及び妥当性は、依然として実証される必要がある。
国際公開特許第WO01/63295号は、神経精神学的又は神経学的状態(BAD(双極性情動障害)、統合失調症及び血管性認知症を含む)のスクリーニング、診断及び予後の確定のための、これらの状態における治療の有効性をモニタリングするための、及び薬物開発における使用のための方法並びに組成物について記載している。
前頭葉及び側頭葉並びに脳幹神経節の繊細な変化に基づく磁気共鳴映像法又は陽電子射出断層撮影法のような他の技法は、統合失調症を伴う個体患者と正常な比較被験体との間のこれらの報告される違いの実寸は概して小さく、2つの群間で顕著な重複を伴っていたため、個体患者における統合失調症の診断、治療又は予後にとってあまり価値がない。これらの神経画像処理技法の役割は、脳腫瘍又は出血のような統合失調症の症状に付随し得る他の状態の排除に主として限定される。
メタボノミクス研究は、個体の代謝状態の特徴的なパターン又は「フィンガープリント(fingerprint)」を作成するのに使用することができる。生体液のような生体サンプルに関するメタボノミクス研究は、生物体全体の生化学的状態に関する情報を提供する。
「メタボノミクス」は、「病態生理学的刺激又は遺伝子改変に対する生物系の多パラメータ代謝応答の定量測定」として従来定義される。メタボノミクスは、生体サンプル:生体液、細胞及び組織の代謝組成を研究するための1H NMR分光法の使用から、また複雑なNMRで作成された代謝データ組を解釈及び分類するための並びに有用な生物学的情報を抽出するためのパターン認識(PR)、エキスパートシステム及び他のケモインフォマティクスを利用する研究から開発された。
生体液及び組織の1H NMRスペクトルは、サンプルが一連の生物学的に重要な内因性代謝産物に関して得られる生物体の特徴的な代謝の「フィンガープリント」又はプロファイルを提供する。この代謝プロファイルは、疾患、障害、毒性プロセス又は生体異物(例えば、薬物物質)により特徴的に変化される。生体サンプルにおける代謝産物パターンの定量化可能な差は、疾患又は障害の基礎を成す分子メカニズムに対する情報及び洞察を付与し得ることである。薬物の影響の評価において、各化合物又は化合物類により、生体サンプルにおける内因性代謝産物の濃度及びパターンの特徴的な変化が生じる。
代謝性変化は、多次元空間における座標として生体サンプルにおいて測定される各代謝産物を表す自動コンピュータプログラムを使用して特性化され得る。
メタボノミクス技術は、代謝の先天異常、肝臓及び腎臓疾患、心血管疾患、インスリン抵抗性及び神経変性障害のバイオマーカーを同定するのに使用されている。
症状の複雑なスペクトル及び他の精神障害とのこのスペクトルの類似性だけでなく、経験的な疾患マーカーの欠如のために、統合失調症等の精神病性障害の現行の診断は主観的なままである。重篤な精神病を治療するのにより効果的な薬剤及び診断試験が臨床的に非常に必要とされている。
近年の機能的ゲノミクス研究によって、統合失調症に対する代謝成分は存在するが、代謝的側面の精神病性障害への寄与は十分に理解されていないことが示唆されている。異常な糖調節、脂質代謝及びミトコンドリア機能障害が統合失調症及び情動障害に関係があるという証拠もある8〜11。しかし、これらの代謝変動が障害自体の原因又は結果であるかどうか、又は薬物治療の結果としてこれらの代謝の変動が起こるか否かは理解されていない。抗神経性障害剤の作用は顕著に脂質異常症と結び付いているが、グルコース代謝の変動の報告よりも前に抗精神病薬eraが存在しており(Haupt and Newcomer12によって総説された)、長期間の統合失調症患者におけるメタボリック症候群の進行速度を求めることを目的とする近年の報告によって、メタボリック症候群の有病率が抗精神病薬の日用量に逆相関することが見出された13。
遺伝的環境要因及び非遺伝的環境要因の両方が統合失調症の病状に寄与し、及び/又は症候群の発症を引き起こすことがこれまでに広く受け入れられている。多くの生物学的ストレス要因(ウイルス曝露3、違法薬物の使用4、周産期の発作5等)及び社会的ストレス要因が環境疾患成分であると考えられ、素因の遺伝子型と相互作用する場合が多い。双生児の研究が複雑な障害に関与する遺伝要因及び環境要因を解明するのに特に強力なツールである。これまでの研究によって、統合失調症を発症する可能性は、血縁関係のレベルに高い相関があり、一卵性双生児においては一致率が約30〜50%に達することが実証されている1、2。不一致な双生児、即ち双生児の1人が障害を示し、双生児のもう1人が障害を示さない双生児が、これらの成分の幾つかの影響を解明する助けと為り得る。十分な数の不一致な双生児から脳サンプルを得ることが困難であるために、今までのところ統合失調症に関して不一致な一卵性双生児の研究は脳撮像に集中している。双生児の研究では、統合失調症においてほぼ一貫して報告された脳の変動のうちの1つ、即ち側脳室拡張は環境要因に寄与している可能性があることが暗示される6〜7。
容易に入手可能な体液、例えば血液、血漿、血清、尿、唾液又は脳脊髄液(CSF)等に存在するバイオマーカーは、神経病性障害の診断に有用であることが証明され、治療応答及びコンプライアンスを予測及びモニタリングする助けとなり、新規の薬剤標的の同定の補助となり得る。適切なバイオマーカーは、転帰を改善するように、又は病理を予防するように設計された新規の早期治療法又は発症前治療法の開発に重要なツールでもある。
精神障害の逆転又は進行に特異的に対応する早期の変化を検出することができるバイオマーカーの検証は、診療をモニタリング及び最適化するのに必須である。予測因子(predictors)として使用したこれらのバイオマーカーは、危険性の高い個体及び化学介入試験に対する標的集団として有用であり得る疾患の亜群を同定する助けとなり得る一方で、サロゲートエンドポイントとして、バイオマーカーは、現在のところ明白な精神障害の発症をエンドポイントとして用いることができない速度での予防介入の有効性及び費用対効果を評価する潜在性を有している。
トランスサイレチン遺伝子は、チロキシン結合グロブリン及びアルブミンを含むタンパク質の群に属する血漿タンパク質トランスサイレチン(TTR)をコードし、これは血中の甲状腺ホルモンを結合し、輸送する。TTRは、血流から脳へチロキシンを輸送する15。TTRは、127個のアミノ酸の一本鎖ポリペプチドであり(14kDa)、非共有結合モノマーのテトラマーとして血漿中に存在する。TTRは脳脈絡叢において、高い速度で発現され、脳脊髄液(CSF)へ放出される。末梢組織において、TTRは主に肝臓で発現される。脳室CSFにおいてトランスサイレチンの推定で3%のみ、及び腰部CSFにおいてトランスサイレチンの10%のみが血液由来である16。生理学的条件下で、高分子複合体はレチノールに特異的な輸送タンパク質であるリポカリンレチノール結合タンパク質(RBP)と結合するので、ビタミンAホメオスタシスに重要な生理学的役割を果たす。このことによって、腎臓において低分子量の輸送タンパク質(21kDa)の糸球体濾過が低減される。濾過される任意のTTR又はRBP分子が、腎近位尿細管の管腔表面上で発現するマルチリガンド受容体であるメガリンと迅速に結合し、それにより内在化する。このように、生理学的条件下で、TTR及びRBPは仮にあったとしても微量だけ尿に存在する。トランスサイレチンをコードする遺伝子TTRは、染色体領域18q11.2〜q12.1にある。
トランスサイレチンはアルツハイマー病及びうつ病に関係している17。トランスサイレチンは、クロザピンで治療された統合失調症患者がトランスサイレチンのレベルにおいて差を示すことも示している18。
アポリポタンパク質はリポタンパク質粒子の構造成分、酵素に対する補因子、及び細胞表面受容体に対するリガンドとして脂質輸送で機能する。5つの主要な型のアポリポタンパク質が存在する:ApoA(ApoA1、ApoA2)、ApoB、ApoC(ApoC1、ApoC2、ApoC3、ApoC4)、ApoD、及びApoE。特に、ApoA1は高濃度リポタンパク質の主要なタンパク質成分であり、ApoA4は腸の脂質吸収で主に作用すると思われ、ApoEは、低濃度のリポタンパク質(LDL)受容体を含む異なる細胞受容体との高いアフィニティ相互作用によって、コレステロール及び脂質の輸送及び取り込みを介在する血漿タンパク質である。ApoA1は、心臓保護特性を有し、アテローム性動脈硬化症及び糖尿病に役割を果たすことが知られている28、29。
Wen et al30は、フェノチアジンによる治療を受けている患者のApoA1のレベルが、健常な個体由来の正常な対照と比べて低いことを開示している。
Middleton et al31は、アポリポタンパク質遺伝子ファミリークラスターの発現レベルを分析した。

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DSM IV の大うつ病の診断の引用で早速(些細ではあるが)間違いがありますね。公式の文章があるのだからそのまま正確に紹介すればいいのに。

また、躁病気分が、抗うつ薬であるECTにより の部分は誤訳ではないだろうか。抗うつ薬またはECT、或いはストリートドラッグ とつながるものと思う。

精神病概説の部分は看護学生向けか何かの教科書の概説部分を参照して書いたか、簡単な辞典を参照して書いたか、ネットのどこかで拾ったかと想像する。hebrephrenicはスペル間違い。日本語としては不安定だが、翻訳前の英語が容易に推定される直訳のようで、一読して理解できるものでもないと思う。

精神病の輪郭もいまだにぼやけているのに、こんな不明確な文章を見せられると、理解の仕方もぼやけていることがわかる。対象と方法が二重にボケを作っているようだ。

ピントのぼけた写真が一枚あって、それを撮影したら、その写真自体もピントがぼけていた感じ。それを反省して苦労してピントを合わせたとしても、どうせ元の写真がぼけているから徒労であり、放置しているといったところ。

精神病は、重度の精神疾患の症状である。 という始まりがすでにおかしい。

第二文は 精神病は、任意の特定の精神状態又は身体状態に排他的に関連されるとは限らないが、精神病は、特に統合失調症、双極性障害(躁うつ病)及び重度の臨床的うつ病に関連される。 とあり、これもまた意味が不安定である。元の英語を想像で復元して理解するしかない。機械翻訳をしておいたから、不明なら原文を当たれということらしい。関連されるとあるのは refer でしょう。

精神病は、脳損傷の症例で見られることが珍しくなく というのもおかしい。脳損傷により精神症状を呈することがあると表現すべきだろう。脳損傷が明らかならば精神病とは言いません。

思考障害の説明のパラグラフで、ろれつが回らない状態(rhyming or punning)を示し と書かれているが、ろれつが回らないのは思考障害ではない。そして(rhyming or punning)と翻訳しないで続けているのは、翻訳した人や機械がなんかおかしいなと思っているらしいなと推測する。ろれつが回らない状態(韻を踏むことまたは駄洒落) と考えてみると、やはり意味が通じない。

こうしてみると、書いた人、翻訳した人、訂正を要求せずそのまま掲載した人、と三者に責任があると思う。より具体的には、執筆者が疾病解説部分を多分大学院生とかアルバイトに任せて、チェックしないで特許役所に提出したのだろう。そうでなければまさに思考障害を呈している。

あまり価値のない特許申請の、しかも前段の概説部分だからどうでもいいと判断され、こんな風に残ってしまうのだろう。翻訳した機械翻訳もそれをチェックした人も、おかしいと思いつつ、原文がそうだから自分の責任ではないと思ったのだろう。特許内容については役人は専門家ではないから、意味不明であっても、とりあえず他国で承認されたものらしいし、ざっと検索して他の特許との重複などの問題がないようだからそのままでおいておくということなのだろうか。

躁うつ病の抑うつ気分を患う個体と大うつ病を患うものの症状間を識別することは困難である。 と書いてある。区別できないと言っているのだから同一のものと考えざるを得ないが、しかし実際には区別できているのはなぜだろうと疑問に思うはずである。その答えが次の文章にある。
精神病性障害の正確な診断を達成するのに現在必要とされる長期にわたる過程は、適切な治療の遅延を引き起こすおそれがあり、中期から長期の疾患の転帰に重大な影響を持つ可能性が高い。 というのである。これがまた難しいですね。
何を言っているのか説明すると、現在の症状から躁うつ病のうつとうつ病のうつは区別できないが、病気の経過を参照すれば鑑別できる。つまり、現在うつならば、経過の中で過去にそう状態があったら躁うつ病であり、そう状態がなかったらうつ病であるというのである。それは当然だ。しかし、経過を見なければ診断できないというのであれば、若い人の場合には未来の経過になるので診断できないし、若年を過ぎた人の場合も、記憶が正確に再生できないと診断できない。診断できないと治療選択ができないということになってしまう。そんな診断学は役に立たない。

だから現在の症状だけで一応疾患を区別して、統計を集めようというのがSDMです。

そんなわけで、このあたりの区別に役立つような適切な検査があればいいでしようという話になる。つまり、現在うつであることは分かったけれども、それが躁うつ病によるものなのか、うつ病によるものなりか区別する検査があればいいという至極当然で平明なことを言っているのであるが、なぜか不明瞭な文章になる。

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他人の文章をこのように分析することは安全地帯から攻撃するようなもので、容易ではあるが、実りは少ない。精神分析に似ている。他人さまのことをなんだかんだ言うのはいいことじゃない。