下書き うつ病・勉強会#41 散る桜とストレス脆弱性モデル

下書き うつ病・勉強会#41 散る桜とストレス脆弱性モデル

桜が咲いていて、いろいろ思う。

「400℃の法則」というのがあり、 2月1日からの日々の平均気温を足して、400℃ に達した頃に桜が開花するというものだ。「600℃の法則」というのもあり、2月1 日からの日々の最高気温を足して600℃になる 頃に桜が開花するというものだ。

冬の寒さも大切だ。暖冬で過ごしてしまうと春になって暖かい日が続いても桜が咲かない。ついには満開になる前に葉桜になり、わずかに咲いた花も散ってしまい、満開の発表がなかった地域もある(2007年八丈島)。

ソメイヨシノは接ぎ木で増やすというのでクローンである。人間で言えば一卵性双生児である。だから環境が同じならば反応も同じである。

春になれば自然に桜が咲くと認識していたが、それは粗雑な認識であって、寒い冬+400℃または600°が目安になるらしい。

春になれば自然に桜が咲くという認識は、思春期からやや経って統合失調症が始まること、それよりもやや遅く双極性障害が始まるという認識と似ている。遺伝子にプログラムされたとおりに病気が始まると考える理論である。

もう少し細かく見れば、桜の400°と同じように観察のポイントがあるのだろう。しかし現状ではもちろん、そのような観察ポイントは不明である。

桜と同じように、統合失調症や双極性障害の発症にあたって、何らかの目印があるのかもしれない。

人間は思春期になると自然に第二次性徴が起こり、100歳くらいになると老化が明確になる。春になれば桜が咲くと考えるのと同じで、人間の中にも何かのカウンターのような装置があって性的成熟とか老化が起こっている。老化については遺伝子の中のテロメアが有名で、これが時間とともにだんだん失われてゆくので、老化が一方向に起こる。だからテロメアが短くならないような仕組みを作ればどうかと提案される。そうなったら進化が停滞して大変だろうと思う。性的成熟については、個体の成長が一応完成する時期になると、身長は伸びなくなって、性徴発現のために栄養が使われるようになる。遺伝子プログラムがうまく働いている。

性的成熟や老化と同じように、統合失調症や双極性障害の発症も起こるのだろうという見方が精神病についての内因性説である。

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桜が散るとき、ストレス脆弱性モデルがよく当てはまる。

満開を過ぎて、時間がたつと、花弁は枝から離れやすい状態になる。それが脆弱性である。

そこに風が吹いたり、雨が降ったりして、花が散るきっかけになる。それがストレスである。

散ったものは元に戻らないので、レジリエンスは全くない。

桜がそろそろ散るかなという頃合いに、例年雨風が強くなる。したがって我々の認識としては、花に嵐のたとえ通りに花が散るということになる。しかし偶然良い天気が続いたとしても、何日も違わずに花は散るはずであり、嵐が原因というわけでもない。

桜を惜しむがゆえに、外部責任にしようとしているのが、人間の認知特性である。

あの雨が原因で桜が散ってしまったなどと人間は錯覚しているが、実際はそろそろ散る時期に雨が降っただけなのかもしれない。

こんなわけなので、ストレス脆弱性モデルは頼りにならない。