消毒に最適なエタノール濃度は?なぜ100%ではいけない?
70vol%のエタノールが最も有効とされています。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、エタノールは60~80vol%で親油性のウイルス(ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスなど)に対して効果的であり、親水性のウイルス(アデノウイルス、ロタウイルスなど)に対しても効果が現れるとしています1)。ヒト皮膚上でロタウイルスを液体石けんと水を用いて消毒した場合の不活性化率が86.9%であったのに対して、70vol%エタノールを10秒間接触させた場合は99.8%に上昇するという良好な結果が得られています。反面、50vol%未満の場合は一般細菌に対する効果が急激に低下するとされています。
なぜ、この濃度が消毒に最適であるか、その理由はいくつか考えられています。エタノールと水は水素結合し、水酸基を内側としたクラスターを形成することで疎水性面積が増大します。70vol%付近ではエタノールと水の組成比が1対1となり、クラスターが最も大きくなります。このことが「70vol%のエタノールが最も有効」の理由であるとする説があります。このクラスターは90vol%以上では形成しにくくなることから、高濃度では効果が落ちるとされているのです2)。
100%エタノールが消毒用として推奨されないのは、エタノールと水のクラスターの存在が少ないという理由以外にもいくつかあります。
手の皮脂を落としてしまうので、皮膚がかさかさになる
揮発しやすいため、十分な接触時間が得られない
91vol%を超える濃度のエタノールはタンパク質凝集を引き起こして壁を作るため、細胞壁に浸透する妨げとなる。