FIRE Financial Independence, Retire Early 経済的自立と早期リタイア

人生をどのように過ごすのか、日本人の考え方が以前とは変化して多様化する中、新たなライフスタイルとして注目されているのがFIREです。

FIREとは、経済的な自立を実現させて、仕事を早期にリタイアすることです。昨今、平均寿命が延びて一生にかかる費用が増えているため、働く期間を長くして収入を増やすという考え方もありますが、FIREは反対に早期リタイアを前提としています。

働き続けることを前提に考えている人からすると、早く仕事をやめると生きがいを失ってしまうのではないか、老後資金が不足するのではないかと不安に思うかもしれません。

そこで、本記事ではFIREとは一体どのようなライフスタイルなのか、また、FIREのメリット・デメリット、FIREを実現する方法について紹介します。

FIREとは「経済的な自立と早期リタイア」を目指す新たなライフスタイル
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FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取ったもので、「経済的自立」と「早期リタイア」を意味する言葉です。

元々は欧米を中心に流行していた考え方ですが、日本でも注目されるようになりました。

以前の日本では定年まで働き続けることが当たり前で、早期リタイアという考え方は馴染みがほとんどありませんでした。

しかし、最近では転職する人が増えるなど働き方の概念が変わり、FIREもライフスタイルのひとつとして注目を集めるようになっています。

従来の「早期リタイア」との違い
FIREも従来の早期リタイアも、より自由な生活を送ることを目的として、定年を待たずにリタイアする点は同じです。

FIREが従来の早期リタイアと異なるのは、ビジネスで成功したり遺産相続したりといった、一生暮らすのに困らないような億万長者になることがリタイアの前提にはなっていない点です。

FIREにおける経済的自立では、資産運用が前提となっています。若いうちに働いて投資元本を蓄財し、“運用益で生活できる”目途が立った段階でリタイアするのです。

毎年の生活費の水準は人によって異なります。例えば、マイホームやマイカーなどに関心がなく、あまり消費をしない生活で充分な方は、多額の貯蓄を築かなくともFIREを実現できると考えられています。

なお、資産運用を前提としない従来の早期リタイアの場合、リタイア後は主に貯蓄を取り崩して生活することになります。期間が経つほど資産が目減りしていきますので、老後に資金が底をつくことのないよう、こちらは多額の貯蓄を用意する必要があるでしょう。

以上の通り、FIREとは資産運用を前提としたリタイアのことをいいます。希望するライフスタイルによっては億万長者でなくともFIREを実現することが可能です。毎年、運用益の範囲で生活し、なるべく投資元本を減らさないようにすることで、長生きリスクにも対応が可能です。

FIRE実現の目標金額は「4%ルール」で算出する
それでは、FIRE実現のためにリタイア時点で資産はいくら準備すべきなのでしょうか。その目標金額を定める方法のひとつに「4%ルール」があります。

4%ルールとは、生活費を投資元本の4%以内に抑えることができれば、資産が目減りすることなく暮らしていくことが可能だという仮定です。

そもそも4%ルールは米国発の考え方で、米国株式市場の成長率7%とインフレ率3%の差に基づいており、米国株式(S&P500)を中心に資産運用を行なえば、年間4%程度の利益を見込むことができるという、いわば米国の経験則から生まれたルールです。

資産運用により資産が年間4%増えて、生活費などの年間支出をこの4%以内に抑えることができれば、資産は目減りしないことになります。

ただし、米国と日本ではインフレ率に差があるなど状況が異なる部分もあります。

そのため4%という数値を用いることが本当に適切であるのかについては議論の余地がありますが、仮にリタイア後に4%の運用益を毎年確保できるとした場合、リタイア時点までに用意できた資産が1億円であれば運用益は年間400万円です。

年間支出を400万円以内に抑えることができれば資産は減らず、翌年以降も1億円の資産を元手に運用を続けることができます。

「サイドFIRE」という選択肢も
総務省の家計調査報告によると2020年の単身世帯の平均支出は年間約180万円です。

4%ルールで考える場合、リタイア後の想定支出額の25倍の資産を準備する必要があるので、180万円を25倍した4,500万円が必要になります。

4,500万円を年間4%の利回りで運用して180万円の収益を得れば、支出額と同額になりバランスが取れる計算です。

ただし、4,500万円もの資産を準備するのは難しいと感じる人もいるでしょう。そのような方には「サイドFIRE」という選択肢もあります。

サイドFIREとは生活費の全てを資産運用のみでまかなうのではなく、資産運用をメインにしながら、副業などの勤労収入と合わせて生活するスタイルです。例えば、リタイア後も週1~2日は自分の好きな副業をするなど、ある程度の収入を得る前提にすれば目標金額を引き下げられます。

仮に月々5万円、年間60万円を副業で稼げば、リタイア後に運用で得るべき金額は180万円ではなく60万円を差し引いた120万円になります。この場合のリタイア時に必要な資産は、120万円を25倍にした3,000万円となります。

参考:1世帯当たりの1か月間の収入と支出(男女 年齢階級別) | 政府統計の総合窓口(s-Stat)

FIREのメリットとデメリット
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早期リタイアして不労所得で生活するFIREに魅力を感じる人も多いと思いますが、FIREを目指すのであれば、FIREの良い点だけでなく注意点も理解しておく必要があります。

FIREの特徴を理解すればFIRE実現後の生活をよりイメージしやすくなるので、どのようなメリットとデメリットがあるのか押さえるようにしましょう。

FIREのメリット
FIREの主なメリットとしては次のような点が挙げられます。

時間や場所に縛られることなく自由な生活を送れる
お金に関する知識や感覚が身に付いてお金の使い方がうまくなる
FIREを実現した後は、好きなことをして暮らすことができます。

自分の好きなように時間を使えるため、趣味やボランティア活動など、仕事以外を中心にした生活スタイルにすることも可能です。住む場所も自由ですし、働かないことに固執せず新たな仕事にチャレンジすることも可能です。

また、FIREを達成するためには家計の見直しを行ったり資産運用の知識を習得したりする必要があり、お金に関する知識が幅広く身に付く点もFIREのメリットのひとつです。

お金のことは単に知らないだけで損をするケースがありますが、知識が身に付いて節約や節税、資産運用ができるようになるとお金の使い方がうまくなります。

FIREのデメリット
FIREの主なデメリットとしては次のような点が挙げられます。

想定通りに計画が運ぶとは限らない
仕事をやめると生きがいを失ったり、再就職が難しくなったりする場合がある
仮に計画通りの資産を用意できて早期リタイアを実現した場合でも、資産運用で想定通りの運用益を得られるとは限りません。

株式や投資信託などによって一定の運用利回りを確保することは必ずしも簡単ではなく、反対に損失が出て資産が減ってしまう可能性もあります。

また、病気やケガ、親の介護などの想定外の出費によって、運用益の範囲で年間支出をまかなうことができなくなる可能性があります。

その他、FIREにより仕事をやめてしまうと、人によってはむしろ時間を持て余してしまい、生きがいを失ってしまう場合があります。再度仕事に就きたいと思っても、キャリア形成が止まってしまうことで、できることが少なくなってしまう場合もあります。

このような事態に陥るリスクを少しでも減らすには、リタイア後に自分がどんな人生を送りたいのかを明確にしておき、余裕を持った資金計画を立てることや、リタイア後もキャリア形成に資する何らかの取り組みを継続しておくことが大切です。

FIREを実現するまでの2ステップ
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FIREを実現して早期リタイアするには2つのステップがあります。

よく考えずに闇雲にFIREを目指すと資産形成がうまくいかないことがあるので、FIREを目指す場合にはあらかじめ計画を立ててから行動に移しましょう。

FIRE実現後の生活費を想定し、必要資金を計算する
FIREを実現するための最初のステップとして、まずはリタイア後の生活費を想定して準備すべき資金額を計算します。

どのような生活を送りたいかによってリタイア後の生活費の想定が変わるので、ライフプランを描きつつ生活費を見積もりましょう。

リタイア後の生活費を考える上では、家賃など毎月かかる固定費を漏れなく含めるとともに、会社員時代とは変わる点に注意する必要があります。

例えば、退職すると会社員時代とは社会保険料の種類や金額が変わり、保険料負担が増えることがあります。健康保険料や年金保険料がどのように変わるのか、事前に確認しておきましょう。

また、子の入学資金など、家族のライフイベントも考慮しなければいけません。ライフイベントごとにかかる費用もFIRE後の資産運用によってまかなうのか、それとも別途資金を用意するのか、事前に計画する必要があります。

リタイア後の年間生活費を見積もれたら、4%ルールに則り、その金額を25倍した額がFIRE実現に必要な金額となります。