“ 飯塚被告が工業技術院の院長になる2年前の1984年、経営学者の清水龍瑩(りゅうえい)氏は「わが国大企業の中間管理者とその昇進」という研究で、大企業の社員を対象にして何が出世を決めているのかという要因を調査した。その中では「学歴」「交渉力」「忠誠心」などだいたい想像がつく言葉とともに、シビアな現実が浮かび上がった。 「責任感や几帳面さは、昇進にマイナスに作用」 それは裏を返せば「今回のミスの責任を取れ!」と周囲から詰めよられても、「いやいや、悪いのは私じゃなくて、私の命令にちゃんと従わなかった部下ですよ」なんて感じで、罪悪感なく責任逃れができる「他責おじさん」ほど、サラリーマンピラミッドを駆け上がっていけるということでもあるのだ。 もちろん、こういう類の話は、海外の心理学の研究などもでもよく聞く話だ。例えば、ウォールストリートジャーナル(2014年7月10日)によれば、出世をする人は、自分勝手な利益のために他人に影響を及ぼそうする傾向や、他者への共感や気配りが欠如した反社会的人格など、心理学者が「暗黒の3要素」と呼ぶ人格的特質を「適度」に持っていることが多いことがさまざまな研究で分かっているという。確かに「他人に優しく、思いやりのある善人」が、組織内での厳しい足の引っ張り合いに勝ち残れないのは、多くのサラリーマンが納得することだろう。 そんな「性格の悪い人間ほど出世しやすい」という現代社会のある意味で普遍的な現象の中で、日本社会の場合は「他人に責任を押しつける」というスキルが特に求められていることなのではないか。”
— 「オレは絶対に悪くない!」という“他責おじさん”が、なぜ出世するのか