記事採録
五輪中止なら日本株買い、外国人投資家の読み
「東京がウイルスエマージェンシー(緊急事態)を強化。五輪開催反対論強まる」――。14日、米CNBCは、テロップで日本のウイルス感染拡大を報道した。
早速、ニューヨーク市場のヘッジファンドや年金運用関係者たちからは、「東京五輪開催強行か、中止か」との質問が飛んできた。
緊急事態を英訳すればエマージェンシーとなるが、これは「戒厳令」を想起させる強い表現だ。日本型「自粛要請」とはかなり異なるニュアンスである。日本側の五輪選手への検査・行動制限などを説明したが、欧米の価値基準では「緩すぎる」とみられる。
「誓約書に署名しても、六本木に繰り出す人は出てくる」などのコメントが聞かれた。基本的に性悪説に基づくので、日本型性善説との温度差が鮮明だ。
ビデオ会議システム「Zoom」で詳細に議論した。年金など長期マネー派は、五輪が中止され国内の感染拡大が抑制され、周回遅れながらワクチン接種が進むことを日本株購入の条件とする。その場合、バリュエーションで見ても、既にワクチン接種を織り込んだ米国株より割安で魅力的と映る。
一方で、五輪強行開催のシナリオならば、感染拡大リスクによる日本経済のマイナス成長の長期化リスクが生じるので、日本株の優先順位は後回しとなる。
なお、ヘッジファンドなど短期マネーも、五輪中止なら日本株買い、五輪開催なら日本株売りの姿勢である。ただし、短期売買なので、五輪を挟み日本株のボラティリティーは高くなるが、基本的には(一方が勝ち、一方は負ける)ゼロサムゲームである。
なお、日銀が上場投資信託(ETF)購入を減らしつつあることは、「日本株正常化」として特に長期マネー派からは評価されている。短期マネー筋は、日銀依存症が顕著な日本株市場のボラティリティーが高まる要因として興味を示している。これまでは日銀介入により日経平均が4000円ほどかさ上げされている、との認識が見られた。それゆえ、日本株の日銀離れの傾向が強まれば、ヘッジファンドによる先物思惑売買は増えそうだ。