「狂気におちいってはいけないが,もしそうなるときはこのようにふるまわないといけない」という暗黙の指示

各エスニック集団には,「狂気におちいってはいけないが,もしそうなるときはこのようにふるまわないといけない」という暗黙の指示(「作法」のようなもの)が存在する

統合失調症であることがわれわれの社会において『狂気』であることの『適切な』やり方だからである

統合失調症的パターンへのこの適応は,現代人のエスニックなパーソナリティが基本的にはスキゾイド構造であることによって大いに促進されている

その社会がほぼ適切に機能している時代(例えば前プラトン期のアテネなど)では,比較的良性のタイプの(ヒステリーのような)神経症が唯一のエスニックな障害となる.一方で機能不全を起こし,衰亡しつつある社会(紀元前4世紀のスパルタなど)では,その極期に,統合失調症のような,重症のエスニック精神病が典型化する

その時代の代表的なエスニック神経症/精神病がヒステリー的か統合失調症的かのパターンが,歴史的にみると,背景の文化に従って交互に,つまり拮抗・交替現象のようにして出現する

Devereux