近代と統合失調症

〈近代〉とは、個々人が生まれや育ちと関係なく己がなすべきことをなすよう啓蒙し、合理化と功利主義のもと地縁と血縁にもとづく共同体を解体した時代。そう仮定すれば、まさしく〈近代〉が生み落としておきながら、放り出し、黙殺してきた亡霊が多数存在する。


彼らが〈自己実現〉という幻想に踊らされ、〈生きる意味〉を求めて〈あるべき自分〉になろうと故郷を捨てたはいいが、何者にもなれず疲れ切り、いざ帰ろうとしても、戻るべき故郷はすっかり様変わりした後。あるいは、もう存在すらしていないかもしれない。

取り残されるのは、なすべきことも見つからぬまま、よるべなくさまよう人ばかり。

資本主義は、こうした近代人を必要としている。お金のために自発的に労働を売る、現代の奴隷。

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祖父母、父母とほぼ同じ生活を送る封建時代の人間にとって、生活は安定したものであり、もちろん、飢饉とか疫病はあるのですが、それも含めて、日常です。
その人の脳は、生まれてからあと、そのような生活に合わせて、脳内の構造も脳内伝達物質の量も調整されます。
そのおかげで、祖父母や父母と同じ生活を送るには最適の脳内環境が作られているのです。

ところが近代を迎え、若者は、子供の頃の脳内環境とは全く違った、都会、産業革命、新しい人間関係に直面します。

また、その頃は性的成熟の時期でもあり、性的にも新しい環境が始まるというストレスが加わります。

このように見てくると、産業革命、近代人、都市生活、性生活、これらが20歳くらいの人間の脳に過剰な負担をかけ、ときに破綻して、統合失調症の一部に至ることは想定されます。