——大隅先生はよく「科学を文化にしなければいけない」というお話をされています。科学を取り巻くさまざまな課題がある中で、根底にある科学への好奇心を育む土壌を整えるためにもそれは重要だと思います。あらためて、科学を文化にするためには何が必要だと思いますか?
大隅:ネット社会になり、大量の情報に触れられるようになりました。そうなると、私たちはやっぱり混乱してしまう。あらゆる情報が相対化されて、常にその中から選択を迫られる気持ちになってしまう人がたくさんいるわけです。
ただそこで大事になるのは、「何が正しいのか」「どうすればそれが実証されるのか」ということだと思います。
言葉でいうなら「データに基づいて、検証して、間違っていれば間違っていたと修正していくこと」です。そういうことが少なくなって「言ったもん勝ち」の状況になってしまうのは、非常に危険です。
科学的であるということは、意見を言うならその根拠を示し、間違っていたら直していくということです。科学のプロセスというのは、そういう歴史なんです。