『にほん語観察ノート』井上ひさし、中公文庫、2004年。
軽妙で、かつ落ち着いた語り口。こういう日本語もよいものだ。NHK教育ラジオを聴く感じに近いかもしれない。
詩人であるわたしの務めは、すべての言葉を、われわれの「からだ」と「暮らし」に根づいた言葉に、どうしたらできるかである。(谷川俊太郎)
これはからだにも暮らしにも根づかない、不勉強やごまかしや虚勢や根のない流行や、そのような言葉が多いということだ。しかし時間がたてばそれらは消えてゆく。
言葉が認識を作り、認識が言葉を作る、そのような、にわとりと卵の関係になっていることは分かる。しかしまた、人間の生育段階を考えると、言葉も認識も形成されていないときにまず言葉と認識がセットになって同時に脳に取り込まれる。そして刻まれる。運命のように一生鳴り響く。かなり堅固な刷り込み学習であるから解除することは難しい。
このようにして、理由もない、影響もよろしくない、そのような習慣がたくさん詰まったものが言語だろう。
そのような夾雑物から解放されて純粋に思考したいが、無理なのだろう。数式や図形をいじっているほうがいいのだろう。