『日本外交 現場からの証言』孫崎享、2015、創元社。

『日本外交 現場からの証言』孫崎享、2015、創元社。
1993年の本に加筆編集して出版したもの。

国家の利害を背景とした交渉は冷酷なもので、手のひら返しも、嘘も平気である。国家間の信義とか倫理とかそんなものは二の次である。大国は自分のために動くし、小国はそれでも何とかついてゆくしかない。
また他方では、外交官として信頼されるためには、人間として信頼されることが必要である。と、当たり前のことを書いている。

国家としての交渉と個人としての交渉は別であると理解するが、個人の次元でも、平気で嘘をついたり、手のひら返しをしたりして、こちらが当惑させられることがあるが、それはこちらが社会経験が未熟で、相手を見極める眼力が不足していたということであろう。
いざとなれば、個人も、平気で裏切るのである。仁義礼智信とか忠孝などという書物にしかないことを信じたほうが負けという場面がある。
しかし年を経てそのような人間を見分けることも次第にできるようになり、それからのちは、平和に、信頼できる謙譲な人たちとともに生きてゆける。
授業料は高かったけれど、仕方のないこととも思われる。これが現実の社会である。いままで立派な人しか知らなかったのは一種の幸せと言えるだろう。