MADセオリー1基礎編
【MADセオリー基礎第1回】
高校生向けの、うつ病のお話。まったくの基礎からということにいたします。
うつ病は脳の病気だということはご存知ですね。
脳というのは、頭蓋骨の中にあるもので、こういうものです。
脳だけを示すと、これです。色はもっと白っぽい感じ。
ざっくり部分に分けるとこんな感じ。
いろんな動物に脳があります。
見ただけでは、何をしているのかよく分かりません。
しかし、脳のある部分をピストルで傷つけられたり、
脳腫瘍で細胞を摘出した後で、
どんな症状が出るかを調べると、
どの部分がどんな機能に関わっているのか、
おおよそ分かってきます。
優位半球というのは、
利き腕を支配している半球のことで、
右利きの人なら、左半球ですね。
交差しています。
おもしろいですね、どうして交差しているのでしょう。
右半球と左半球と二つあるのはどうしてなのか、
これは猫でもマウスでもありますから、
どうしてなのか、何の役に立っているのか、
よく分かりません。
でも、肺も腎臓も二つあります、
むしろそのほうが自然ですね。
心臓や肝臓がひとつだけだということが、不思議なくらいです。心臓は右心室・右心房と左心室・左心房がありますね。左右が融合したのでしょう。
ひとつだけあるとすれば、左右が融合して、真ん中にあるはずですが、
心臓や肝臓は、最初は真ん中あたりにできて、そのあと内臓全体が回転したわけです。
しかし脳は、形は左右対称ですが、機能は左右対称ではありません。左右対称と思われる部分もあります。そのあたりはまた別に考えてみましょう。
さて、この脳というものは、なんでできているのか、どのような仕組みになっているのか、知りたいと思いますね。手で触っていても、お豆腐のようなもので、よく分かりません。そこで、光学顕微鏡で見ます。見えやすいように、染色します。さらに電子顕微鏡で見るときは、凍結させてそれを割って断面を露出させます。細胞内の構造を詳しく見るときは電子顕微鏡を使います。
いま、光学顕微鏡で観察すると、脳は神経細胞でできていることが分かります。
ここでは染色して見やすくした神経細胞を示しましょう。
脳は脳神経細胞からできています。情報を伝達したり、加工したりします。
そのほかに、脳には神経細胞に栄養を補給したり、傷つけられた細胞を修復したりしたり、髄鞘(ずいしょう)といわれる神経細胞の軸索(じくさく)の周りを包んでいる絶縁体を作る細胞があります。そのあたりが病気の原因だとする説もあります。
樹状突起というほうから情報が入力されて、内部で処理されて、
つまり、細胞の中で、こっちの情報のほうが大事だ優先だとか、
この二つの情報が来たから、反応はこうしようとか、
あの情報の後でこの情報が来たから、無視しようとか、
そんな「判断」や「処理」みたいなことが起こります。
処理された信号が軸索方向に伝達されます。
軸索の最後は、別の神経細胞に接していて、
そこに狭い隙間がああります。シナプス間隙といいます。
シナプス間隙で、神経細胞の軸索から神経伝達物質が放出される。
受ける側の神経細胞の表面にレセプター(受容器)があり、そこで神経伝達物質をつかまえる
神経伝達物質にはセロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、GABAなど、いろいろあります。
下は小脳の図で、かなり研究が進んでいます。
無意識に近いくらいにいつものように自動車に乗り、曲がったり、ブレーキをかけたりしているのも、この部分です。
「どうして直接電気信号でつながないのですか?そのような生物のほうが能率がいいのではないでしょうか。そもそもそうなれば、シナプス部の異変として考えられている病気がなくなるでしょう」という質問があるかもしれません。
シナプスがあるせいで病気が起こるとしても、それを補うくらい、シナプスがあったほうが利益があるということなのでしょう。
結局、このような神経細胞を組み合わせて、現在の脳の機能が全部説明できるだろうという、充分になモデルを作れば、将来は自意識の発生が説明できるのではないかという説と、そんなことはとてもできない、神経細胞は単に神経細胞で、どのように集めても組み合わせても、自意識の発生を説明できるとは思えないとする説まで、いろいろです。さらに、生き物とか、人間存在を、細胞という物質系だけで説明する立場は、古くからある宗教とは立場の違いがあります。唯物論者は天国にいけないとかいうわけですが、天国と言われても困ります。
このような細胞を階層的に組み合わせ、脳機能の生成ができないか、コンピュータ関係の人たちはトライしています。かなりの成果もあるようです。