下書き うつ病・勉強会#24 MADセオリー#3

【基礎第三回】

さて実際に一個の細胞をここに持ってきて、実験することとしましょう。

生体内では、たとえば次のように存在しています。

近赤外微分干渉顕鏡を用いて、神経細胞を細胞内染色する手法を用いたものです。

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実験で使いやすいのは、イカの巨大神経です。

樹状突起に刺激を与えて、軸索に伝わる反応を見るわけです。

それを電気刺激で拾ってもいいし、最終的なセロトニンの分泌で見てもいいのですが、電気的測定のほうが分かりやすいので、やってみるとしましょう。

すると、普段は-70くらいの電位が、刺激を受容すると-55の敷居を越えて、+40のピークに達し、

そのあとマイナスが大きくなり、過分極などが見られています。

そのすぐあとに、新しい刺激が入ってきても、神経細胞は反応しません。これを不応期といいます。

処理が完了するまで、次の信号は待たされるわけです。

これは生体内で、過剰な反応を抑制するために役立っています。

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では、ここからがうつ病の話になります。

うつ病というのは、みなさんの印象では、しょんぼりしている、しなびている、枯れている、悲しい、元気がない、などではないでしょうか。

失恋したり肉親がなくなったり、ショックで、しばらく脱力しているのも、うつという言い方をするでしょうね。それらをここでは「反応性のうつ」と呼んでおきます。

実際は、うつの中にはイライラして怒りっぽくなったりするタイプもあり、これもうつなのかと、ご家族は驚いたりすることがあります。

うつ病の場合には、不眠になることが多いのですが、ときに過眠になることもあり、また、食欲不振になることが多いのですが、食欲亢進することもあります。

実は、うつ病についての正確な定義はまだありません。原因が分かっていませんので仕方がありません。

正確な定義を作るための作業委員会がデータを蓄積し解析するために定めた分類ならばあります。DSMやICDといわれるものです。しかしその暫定的診断基準によって決めた場合に、何を含んでいるか何を含んでいないか、いろいろと問題があるのです。

反応性のものをどうするか、子供のケースはどうするか、他の病気との関係が疑われるけれども、因果関係がはっきりしない場合、これらのもので、意欲がなく、興味もなく、ないてばかりいて、死にたいと言っているとき、それをうつ病と言うのかどうか、まだはっきりしていません。

個人的には、研究データを蓄積したのでできるだけ細分化して決めておいて、あとで原因が分かったら合併させるということでいいような気がします。

おおむね、DSMでいううつは広すぎるのですが、それにも理由があり、アフリカのうつも南米のうつも中国のうつも採録すると、DSMみたいな感じになるという事情もあります。日本で従来診断されている狭い意味でのうつ病はある程度、一時期の日本に固有のものだった色彩もあるのです。

世界中を見渡して見て、「憑き物」とか「シャーマン」とか、そういった文化・地域・歴史的なものは多いわけです。例えば、何かの鳥が現れたら、一ヶ月くらい泣いてばかりいるとか、そんな反応もあるわけで、そのような文化の中で生きているとしか言いようがありません。

そのあたりをはっきりさせるためにも、うつ病の原因を突き止めることが必要なわけです。少なくとも、一部のうつ病はこんな原因で起こるのだとわかれば、違うタイプのものは、どこからが共通なのか、共通でないのか、違いは何に原因していて、どのような違いが現れるのか、そんな風に話は進むでしょう。

うつ病の原因は現状では謎なので、いろいろな説があります。セロトニン仮説にしても、また他の神経伝達物質のことに関しても、原因なのか結果なのか、決め手がありません。セロトニンが原因であるうつ病もあるかもしれませんし、結果としてセロトニンに異常が起こるうつ病もあるのかもしれません。(続く)