下書き うつ病・勉強会#25 MADセオリー#4

【基礎第四回】

ここから私の説を紹介したいと思います。MADセオリーと言います。神経細胞を反復刺激したときの反応で神経細胞を特徴付けて分類し、それを基盤にして、病前性格と躁うつ病を整合的に説明します。

まず、一つの神経細胞を取り出して、くり返し刺激して、反応がどうなるか、調べます。

小さな神経についてはかなり難しいのですが、大きな神経ならば、ガラス電極というものを用いて測定する方法があります。

反復刺激の時間があまりに近接していると、先に述べた不応期の問題があり、刺激に反応しません。

これはたとえば、あまりに矢継ぎ早に刺激が繰り返されたとき、細胞活動が停止することに対応しています。

さて、横軸に反復刺激をした時間経過を取り、縦軸にそれに対する反応の大きさを取ります。

例えば、細胞一個の話ではないですが、猫の尻尾を1分に1回ずついじるとしてみます。

猫ははじめは反応していますが、

そのうちいじられても、反応しなくなります。

危険でないと分かり、新奇さがなくなり、慣れて行きますから、

反応してもムダだし害もないと知ってしまえば、放置するわけです。

一方、毒物や天敵に関しての反応は、

「慣れ」てしまってはいけません。猫は死んでしまいます。

実験の具体例で言えば、

神経細胞をひとつ取り出して、

一定の時間間隔で繰り返し電気刺激を与え、

結果として出力される反応を測定すればいいわけです。

いろいろな刺激が考えられますが、

動物に対しての大部分の刺激は、

反復されているうちに、無反応になる(D)はずです。

しかし一部分には、

繰り返せば繰り返すほど反応が大きくなる種類のもの(M)もあり、繰り返し刺激しても反応が一定の種類のもの(A)もあります。

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これを分類してみましょう。

一定時間の間隔を置いて繰り返し同じ刺激をしたとき、

どんどん反応を大きくするタイプの細胞があります。

グラフの横軸は時間で一定間隔で刺激するとします。

縦軸は反応の大きさです。

(1) M タイプ

無題00001.PNG

これをManie-cell タイプと呼びます。躁タイプです。

刺激を続ければそれに応じて頑張って反応も大きくなるタイプです。

しかしいつまでも反応を増大させることはできません。

反応の大きさには限界があります。

継続するにもエネルギーが必要です。

いつか休止に追い込まれます。

これは頑張ったあとにうつになってしまうという

我々の観察に一致しているわけです。

学習という面では、どんどん新しい変化に対応しているので、有利な細胞でしょう。

反応が大きすぎてシステムが壊れる危険がありますから、

ある程度のところで中止すれば安全ですから、役に立ちます。

これはつまり、だんだんしっぽが痛くなってくると猫は痛くて逃げますから、刺激から遠ざかることができるわけです。神経細胞は動くわけではないから、猫だとたとえになりませんね。

(2)次は、反復刺激に対して、冷静に一定の反応を返し続ける細胞です。Aタイプ。

無題00002.PNG

これをAnankastic-cellと呼びます。強迫タイプの細胞ということです。

同じ入力刺激に対して、同じ出力を次の神経細胞に送るタイプです。

繰り返す、反復する、飽きない、根気強い。

しかしこの細胞の活動にも終りがきます。

反応を続けていると燃料が不足になったり老廃物や疲労物質が蓄積したりするので、それを補充したり片付ける仕事が必要になります。出力と補充・掃除が並行できれば良いのですが、ある限界を超えるとと、神経細胞は休止します。復活するためには限界の前に休む方がいい。

(3)次に、一、二回程度反応して、あとは反応しなくなってしまうもの。Dタイプです。

無題00003.PNG

Depressive-cellです。うつタイプです。

これは上記二者に比較して、とてもおとなしく、すぐに諦める細胞です。

実際の話は、MタイプやAタイプのように神経が反応しても、その信号に従って動く筋肉は反応できなくなってしまいます。神経よりも早く筋肉が疲れるからです。

D細胞は、その点で筋肉を保護しながら動かす細胞としては適しています。

アキレス腱が切れたり、肉離れしたりする前に、神経が反応を中止してくれれば、

筋肉としては助かります。

以上、MADと、反復刺激に対する一個の細胞の反応特性を、

3タイプに分類して説明しました。

さて、これらの神経細胞が脳にどのように分布しているか、考えて見ましょう。

実際は、脳のどのあたりにどの特性の細胞が多いのかによって、

脳の機能としてかなり様子が違います。

たとえば暗算はスタミナがあるが、絵を描くことは長続きしないとか。個体差または個性が生じます。

今、簡略化のために、場所は問わず、大きく脳全体の細胞数の傾向として考えておきましょう。

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ちょっとわき道にそれると、三種類だけではなく、多くの中間型も考えられます。

たとえばひとつだけ例を挙げます。

下の図は、一定時間間隔の同一反復刺激に対して、最初はMに似た反応で次第に増大する出力、しばらくするとAの反応で一定の出力、最後はDになるってお休みしてしまうというものであれば、

無題00004.PNG

という形になるでしょう。

また、神経細胞には、軸索からの突起がいくつもあるのですから、

それぞれの突起で違う特性を示すこともあるでしょう。

また、ホルモンの影響などがあれば、その時だけは本来その細胞の持つ特性とは別の特性を示すこともあるでしょう。

実際にはそのように複雑になっているはずです。

しかしここでは話を単純化してしまいます。

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さて、脳に分布する細胞を分類して、縦軸に細胞数を取り、M→A→Dの軸を横軸にすれば、

各個人ごとに、どのタイプの細胞が多いのか、示すことができます。それが病前性格です。(つづく)