下書き うつ病勉強会#147-2 うつ病と糖尿病とオレキシン

(1)オレキシンが多いと覚醒し、少ないと眠くなる。
(2)レンボレキサントとスボレキサントはオレキシン受容体にオレキシンの代わりにくっつく。するとオレキシン系の神経伝達は遮断される。その結果、眠くなる。オレキシンが少ない状態と同じになる。
(2-2)オレキシン受容体ブロッカーは、オレキシンの代わりにレセプターにくっついても、刺激にならない。だからオレキシン遮断薬である。オレキシン刺激薬が欲しい人もいる。
(2-3)レセプターにくっつかなかったオレキシンはどうなるのだろう。シナプス前細胞に再取込みされるのだろうか。
(2-4)オレキシン・ブロッカーを使い続けるとレセプターのアップレセプターが起こり、オレキシンに過敏になるのではないか。
(3)オレキシンはレム睡眠を抑制しない。したがって夢が多くなる。悪夢が多くなる人もいる。
(3-2)ここのメカニズムが知りたい。
(4)オレキシン系を抑制すれば、睡眠が改善し、その結果、糖代謝が改善する場合もある。
(4-2)この考えは、オレキシンが直接糖代謝に影響するのではなく、睡眠を改善するから、糖尿病によい影響があるという考えだ。
(5-1)オレキシン神経はストレスにより急速に活性化される。うつ状態では抑制される。
(5-2)ストレスで活性化、うつ状態で抑制というのは、対比になっていないのではないか。
(5-2)攻撃するか逃避するかの場面でオレキシンが上昇する。休息・神経修復の場面ではオレキシンが低下する。
(5-3)火事の時はオレキシン上昇、焼け跡ではオレキシン低下。とはいうものの、焼け跡の様子も、火事の直後はオレキシン上昇であるが、修復が本格的になるとオレキシン低下したほうがよいだろう。
(6)うつ病患者の脳脊髄液中ではオレキシン濃度の低下が認められる。
(6-1)休息するにはオレキシンが低下したほうが都合がよい。オレキシン低下はうつ病の最初の時期で、まだエピソードの興奮が残っている時期には上昇しているのではないか。オレキシン遮断薬ではなくオレキシン刺激薬が必要。
(7)うつはインスリン抵抗性や 2 型糖尿病の発症と関連している。
(8)慢性的なストレスを受けたマウスでは、オレキシンを介するストレス適応が破綻し、うつが誘発される。
(9)このような状態でも野生型マウスは糖代謝に異常を示さないが、うつを呈したオレキシン欠損マウスでは肝インスリン抵抗性が誘発される
(10)うつによる肝インスリン抵抗性を内因性のオレキシンが防止する
(11)「肝インスリン抵抗性」とは。肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に作用しなくなった状態。 インスリン抵抗性があると、膵臓からインスリンが分泌されても肝臓や筋肉で血液中のグルコースを十分に取り込まないため、血糖値が下がらず、糖尿病の発病につながる。 明らかな飲酒歴がなく、肝臓の脂肪化を特徴とする肝疾患。
(12)セラミドについて。肝臓で特異的にElovl6を欠損させたマウスでは、ステアリン酸を有するセラミドが減少し、インスリン感受性が亢進する。肝臓におけるElovl6の阻害やセラミドの脂肪酸の質の管理が、脂肪肝や糖尿病に対する治療の標的となる
(13)視床下部オレキシン系は体内時計やエネルギーバランスの変化にしたがって活性化し,睡眠・覚醒を調節する.さらに,交感神経を介して肝臓の糖産生や骨格筋の糖取り込みを調節し,血中グルコースの恒常性を維持するとともに,インスリン抵抗性の防御に寄与する.
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(A)内因性うつ病の時、レム睡眠を抑制して夢を少なくするのがよいと思うので、レンボレキサントとスボレキサントは使わないほうがよい。
(B)内因性うつ病のない不眠症には使ってよいと思われる。
(C)オレキシン系をブロックするとサーカディアンリズムが崩れるかもしれない。
(D)うつ状態のときオレキシンが抑制されるのは、原因というより、結果かも知れない。うつ状態のときは、食欲減・睡眠過多が適応的である。オレキシンが少なくなるのはうつ病の回復プロセス初期においては望ましい。
(E)うつ状態のときオレキシンは抑制されている。さらに薬剤でオレキシン系を不活発にするとなおさら過眠になる。。
(F)満腹になるとオレキシン低下となり、眠くなる。血糖値の急激な上下を避けることが必要。

(G)ところどころで矛盾したことも書かれているが、オレキシンの特性としてそうなのだろうと思う。
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オレキシンは、視床下部外側野およびその周辺領域に特異的に発現している神経ペプチドである。その機能は睡眠・覚醒、摂食行動、自発運動量および自律神経系の調節など多岐にわたり、一見複雑に思われる。

しかし、これらはいずれも個体の生存に必要な機能であり、オレキシン神経系は空腹時に活性化して覚醒状態を維持し、食餌を探索する行動を促す役割を果たすと考えられている。さらに最近、オレキシンがエネルギーの補給だけでなく代謝にも関与することが明らかになってきた。代謝調節因子としてのオレキシンの作用を概説する。

1。はじめに
オレキシンにはオレキシン A と B(ヒポクレチン 1と 2)の 2 つのアイソフォームが存在する。これらは共通の前駆体プレプロオレキシンから生成されるが、分子内ジスルフィド結合を有するオレキシン A の方がB よりも構造的に安定である。視床下部のオレキシン神経は脳の広範囲に投射し、G タンパク質共役型受容体であるオレキシン 1 受容体(OX1R)またはオレキシン 2 受容体(OX2R)を介して作用する。OX1R はオレキシン A に高い親和性を示し、OX2R はオレキシンA と B の両者に同程度の親和性を示す。脳内のOX1R と OX2R の発現分布は同一ではなく、たとえば視床下部では、OX1R の発現は腹内側核(VMH)に最も顕著に認められるのに対し、OX2R の発現は結節乳頭核、室傍核、弓状核および視床下部外側野などで多く認められる。

2。オレキシンとその受容体
オレキシン神経の活性やオレキシンの発現量は日内変動しており、覚醒期に増加し、休息期(睡眠時)に減少する。オレキシン神経には、生体リズムの光同調性制御の中枢である視交叉上核(SCN)から視床下部背内側核(DMH)を経由する密な神経投射がある。オレキシン分泌の日内変動が認められ、SCN を破壊したラットの脳脊髄液中ではオレキシン濃度の日内変動の振幅が減少する。ただし、マウスの給餌時刻を変化させるとそれに対応してオレキシン神経の活性化、覚醒および活動時刻がシフトするが、オレキシンの欠損によりその適応能力が低下する。DMH は食事の周期に基づく概日リズム形成に重要な部位であるため、オレキシンは食事性の日内リズムに合わせて覚醒レベルや行動量を増加させると考えられている。

4。オレキシンによるエネルギー代謝調節
オレキシンは睡眠・覚醒、自発運動量および熱産生を介してエネルギーバランスを調節している。オレキシンは血糖値が低下する状態において覚醒時間を延長させ、食餌の探索に必要な行動量を増加させる。オレキシン欠損マウスでは摂食量が低下するが、高脂肪食餌下では過度の肥満を呈する。その原因として、オレキシンの欠損に伴う自発運動量の低下に加え、褐色脂肪細胞の分化と熱産生機能の障害によるエネルギー消費の減少が関連することが示されている。なお、オレキシンには摂食亢進作用があるが、その作用は体内の栄養状態に依存して変化する。オレキシンの欠損はナルコレプシーを誘発し、ナルコレプシー患者では肥満や 2 型糖尿病のリスクが増大する。また、カタプレキシーを伴うナルコレプシー患者では、肥満とは独立して、インスリン抵抗性などの代謝異常が生じる。オレキシン過剰発現マウスでは、OX2R シグナルを介して高脂肪食負荷による肥満や耐糖能異常が防止される。このようにオレキシンはエネルギー代謝を促進することにより肥満や糖尿病の防止に寄与している。

5。オレキシンによる糖代謝調節
生体のグルコース恒常性はホルモンの末梢作用だけでなく、視床下部-自律神経を介する末梢臓器連関によって維持されている。オレキシンを中枢投与すると交感神経系が活性化し、血圧や心拍数が増加する。血糖値の制御に関しても、オレキシンをラット脳室内に投与すると交感神経系を介して肝臓の糖新生が増加し、血糖値が上昇する。また、オレキシンを VMH に投与すると交感神経系を介して骨格筋のインスリン感受性や糖取込み活性が増加する。血中グルコース濃度の基礎値には日内変動があり、その振幅はSCNおよび交感神経系を介する肝糖産生に依存している。オレキシンはこの日内変動の調節に関与する可能性が示唆されている。したがって、オレキシンは肝臓で糖を産生し骨格筋での利用を促進すると考えられる。ただし、オレキシンによる自律神経の調節作用は投与部位や用量によって異なり、交感神経を抑制する場合もある。マウスに低用量のオレキシン Aを脳室内投与すると空腹時血糖が低下するため、オレキシンによる糖代謝調節は二相性である可能性がある。視床下部のオレキシンの発現量は加齢や高血糖の影響で低下する。オレキシン欠損マウスでは、加齢に伴い著明なインスリン抵抗性や耐糖能異常が生じる。したがって、オレキシンはインスリン抵抗性の防御因子であると考えられる。なお、血中にも低濃度のオレキシンが存在し、膵臓や脂肪などの末梢組織ではオレキシン受容体の発現が認められる。オレキシンの末梢作用を示す報告もあり、その生理的意義の解明は今後の課題である。

6。うつ病態におけるオレキシンの糖代謝調節作用
ヒトではポジティブな感情を抱く時、社会的交流がある時、怒った時などに扁桃体のオレキシン濃度が上昇する。また、オレキシン神経はストレスにより急性的に活性化されるが、うつ状態では抑制される。実際、うつ病患者の脳脊髄液中ではオレキシン濃度の低下が認められる。一方、うつはインスリン抵抗性や 2 型糖尿病の発症と関連していることが報告されている。慢性的なストレスを受けたマウスでは、オレキシンを介するストレス適応が破綻し、うつが誘発される。このような状態でも野生型マウスは糖代謝に異常を示さないが、うつを呈したオレキシン欠損マウスでは肝インスリン抵抗性が誘発される。したがって、うつによる肝インスリン抵抗性を内因性のオレキシンが防止すると考えられる。

睡眠障害はインスリン抵抗性の増悪因子でもあり、オレキシン系の抑制による睡眠の改善は代謝疾患の改善にも役立つ可能性がある。ただし、カタプレキシー、気分障害および摂食障害などの副作用が出現しないよう十分な注意が必要である。また、加齢、肥満・高血糖およびうつ状態ではインスリン抵抗性の防止に重要なオレキシンが低下するため、今後、時間治療の概念に基づき代謝疾患の新しい治療法を開発する上で、オレキシン受容体作動薬の有効性にも注目したい。
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脳でオレキシンという覚醒性の神経伝達物質が作られます。

オレキシン神経系が覚醒系を全体として制御しているのですが、ナルコレプシー患者の脳脊髄せきずい液を検査すると、9割以上の症例でオレキシンの量が測定できないほど低下しています。

死後脳を調べるとオレキシンを産生する神経細胞が消失しています。

この変化はナルコレプシー患者さんだけに観察されるため、ナルコレプシー診断の目印の一つとなっています。

ただ、なぜオレキシン産生細胞が脳から消えてしまうのか、原因はまだわかっていません。
ナルコレプシー発症直前に何かの原因があって後天的に低下するものと推測されています。
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オレキシン受容体拮抗薬は、レンボレキサント(商品名:デエビゴ)とスボレキサント(商品名:ベルソムラ)があります。

脳内で睡眠・覚醒に関与するとともに、摂食行動、報酬系、情動にかかわるとされています

オレキシンが結合する受容体にはオレキシン受容体1とオレキシン受容体2があり、レム睡眠の抑制には受容体1と受容体2の両方が、覚醒の安定には主に受容体2が関与(受容体1も一部関与)しています

デエビゴもベルソムラもオレキシン受容体1とオレキシン受容体2を阻害(ブロック)することで覚醒状態から睡眠へと導きます。

オレキシン2受容体阻害の強さがより睡眠に強く関与すると考えられており、
デエビゴはベルソムラより睡眠に対する作用が強いと想定されます。

オレキシン受容体拮抗薬は依存性のリスクが極めて低いと考えられています

筋弛緩作用が少なく転倒のリスクが少ないこと、内服後の健忘などの認知機能への影響も少ないこと、呼吸機能への影響がすくないこと、緑内障などの眼圧への影響がないこともメリットです
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デメリット

ルネスタを中心としたZ-drugsでは深い睡眠(深睡眠)が得られますが、オレキシン受容体拮抗薬では得ることができません。

人はレム睡眠の時に夢をみます。オレキシン1・2受容体はレム睡眠の抑制をしています。そのため、オレキシン1・2受容体を強く阻害するとレム睡眠が増加し、夢が多くなる事象が起こります。ベルソムラの服用で夢が多くなったということがよく聞かれます。ベルソムラは他の睡眠剤と比較し悪夢の副作用が多いことがわかっています。レム睡眠の増加によるものと考えられています。悪夢をみやすい患者さんや嫌なできごとを体験して眠れない患者さんが服用する際は注意が必要です。

デエビゴは作用時間が長く中途覚醒(夜間や明け方に目が覚めてしまう症状)に効果がありますが、用量が多いと持ち越し効果(眠気が翌日起きた後も残ってしまう現象)が生じるため、内服する用量に注意が必要です。
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オレキシンが結合する受容体には、オレキシン受容体1とオレキシン受容体2があります。二つの受容体の中で、オレキシン受容体2を阻害したほうが、睡眠に対する薬効が強くなります。
レンボレキサントはスボレキサントと比較すると、オレキシン受容体2を阻害する働きが強いことが分かっています。そのため、デエビゴはベルソムラよりも睡眠を誘発する作用が強いと考えられます。
デエビゴほうが効果時間が長く、効き目が長いと言えます。

夢の役割ははっきりしていないが、何かの役に立っていると考えられる。ということは、夢を抑制してしまうのは、何か役に立つプロセスを阻害してしまうのかもしれない。

あるいは、内因性うつ病の場合には、体調不良の一般的対処反応としてではなく、特異的に不眠になり、夢が多くなるとすれば、夢を多くすることで、内部処理の期間を短縮することができるのかもしれない。あるいは、よく眠れるが夢は見ないタイプの睡眠がうつ病回復に有効なのかもしれない。

夢が多いほうが治療促進的なのか、そうではなくて、夢を抑制したほうが治療促進的なのか。あるいは夢とうつ病の治癒プロセスは関係ないのか。

多分、夢のプロセスがうつ病には毒になるから、それを回避するために不眠になるのではないかと思う。だから、夢を抑制しつつの睡眠がよいと考えたのだが、よく分からない。

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糖尿病の場合にはオレキシンブロッカーではなく、オレキシン作動薬がよいと説明されている。

(終わり)