『状況へ』大江健三郎、岩波書店、1974年。

『状況へ』大江健三郎、岩波書店、1974年。
1975年第6刷の古本。神田の古書店の札が貼ってある。定価700円。当時の岩波新書は230円。本の最後に印刷されている岩波書店の宣伝にはT.K生による『韓国からの通信』などが出ている。

「ガリヴァの馬」の章が面白かった。ジョナサン・スウィフトのガリヴァ旅行記からの引用。ある島に住んでいる種族フウイヌムは、先天的に道徳的な存在であり、理性的動物にどうして悪なるものが存在しうるのか、彼らには理解できない。そこでガリヴァは戦争という、フウイヌムの国には存在しない悪について詳しく説明する。この説明が実に興味深い。
そしてその島に住む、ヤフーと呼ばれる野蛮で醜悪な人間を、撲滅すべきか否かという討議が始まる。

ネットで有名なyahooを調べると、「粗野な人」という意味がある「Yahoo」(『ガリヴァー旅行記』に登場する野獣の名前が由来)と出ている。

「悪疫年」の章では、1665年のロンドンでの悪疫流行を書いたダニエル・デフォーを取り上げている。「ピープス氏の秘められた日記」もこの時期のものだ。

金大中事件も扱われている。1973年8月8日の出来事だった。