下書き うつ病・勉強会#43-2 メランコリー親和型とディスチミア親和型 病前性格2

カテゴリ     メランコリー親和型           ディスチミア親和型
年齢層中高年層青年層
関連する気質執着気質(下田)
メランコリー性格(Tellenbach)
Student apathy (Walters)
退却傾向(笠原)と無気力
病前性格社会的役割・規範への愛着
規範に対して好意的で同一化
秩序を愛し、配慮的で几帳面
基本的に仕事熱心
自己自身(役割ぬき)への愛着
規範に対して「ストレス」であると抵抗する
秩序への否定的感情と漠然とした万能感
もともと仕事熱心ではない

症候学的特徴
焦燥と抑制
疲弊と罪業感(申し訳なさの表明)
完遂しかねない“熟慮した”自殺企図
不全感と倦怠
回避と他罰的感情(他者への非難)
衝動的な自傷,一方で“軽やかな”自殺企図
治療関係と経過初期には「うつ病」の診断に抵抗する
その後は、「うつ病」の経験から新たな認知
「無理しない生き方」を身につけ、新たな役割意識となりうる
初期から「うつ病」の診断に協力的
その後も「うつ症状」の存在確認に終始しがちとなり「うつの文脈」からの離脱が困難,慢性化

薬物への反応
多くは良好(病み終える)多くは部分的効果にとどまる(病み終えない)
認知と行動特性疾病による行動変化が明らか
「課長としての私」から「うつを経験した課長としての私」へ
(新たな役割意識の獲得)
どこまでが「生き方」でどこからが「病状経過」か不分明「(単なる)私」から「うつの私」で固着し,新たな文脈が形成されにくい
予後と環境変化
休養と服薬で全般に軽快しやすい
場・環境の変化は両価的である(時に自責的とな る)
休養と服薬のみではしばしば慢性化する
置かれた場・環境の変化で急速に改善することが ある
勤勉・実直・他者のための奉仕というメランコリー親和型的な倫理観を自然に認め評価する雰囲気が,1970年代後半から,職場や学校にかかわらず,社会全体で明らかに廃れはじめたことと,おそらく無関係ではあるまい.あるいは,「精神医療の大衆化」すなわち,うつ病へのスティグマの希薄化と,うつ病啓発活動が,肝心のメランコリア親和型うつ病者よりも,「現代型うつ病」の受診をより促進しているという皮肉な結果の表れなのであろうか.
10年後,20年後のわが国の抑うつの臨床はどうなっているのであろうか? その頃には,「他責」主体であった彼らの世代の抑うつも「自責の病理」を主体とするメランコリー型うつ病を呈するようになるのであろうか?もしそうでなければ,青年期だけでなく中高年期にあっても「他責の病理」が臨床を席捲する時代となってしまうことになる.