MAD-KON-theoryについて、疲弊性うつ病の話ですねと言われたことがある。どう説明すればよいのだろう。疲弊性うつ病の話ではない。
Kielholzが消耗抑うつ、または疲憊(ひはい)抑うつ Erschoepfungsdepression と表現した。疲労困憊で使う漢字なので、『はい』と読むらしいと分かるが、疲憊(ひはい)とは普通は言わないので、違和感がある。過労でもよいと思う。へばり神経衰弱とも表記される。
消耗、疲労困憊についてはBeardとKraepelinが論じていた。
「神経症」と「心因反応」について。DSM─IIIの登場以来,神経症概念が消え,心因といえばPTSD概念ばかりが強調される。Beard、G.M.(1839~1883)による神経衰弱が有名で、ほかにはKraepelin、Jaspers、Schneider、Pawlow、Griesinger、Ey、さらにFreudが有名である。
「集中力がない」、「人と会うと緊張する」、「視線が気になる」、「やる気が起こらない」、「億劫である」、「いらいらする」、「気分が落ち込んでいる」、「不安感が強い」、「些細なことが気になる」不眠、食欲不振、などを呈する非特異的な消耗状態をいう。
神経衰弱 Neurasthenia "A neurotic disorder characterized by fatigue、irritability、headache、depression、insomnia、difficulty in concentration and lack of capacity for enjoyment. It may follow or accompany an infection or exhaustion、or arise from continued emotional stress."
神経衰弱についての分類 1.各種身体疾患(急性熱性伝染病・慢性伝染病)による憔悴 2.Beard型:感情的圧迫の心身の過労が原因。へばり神経衰弱Erschoepfungsneurasthenie。急性神経衰弱 akute Neurasthenie。 3.患者の側に原因があって起こる神経衰弱。体質性神経衰弱konstitutionelle Neurasthenie: 神経質 Nervositat
Beard型神経衰弱が典型的。彼は神経衰弱をアメリカの文明病と捉えたとの紹介もある。
神経衰弱論の起源は、デカルト的な機械論にたった身体医学が支配的となる18世紀のヨーロッパにたどることができる。ジルボーグ(Zil-boorg、G.)14)は、この機械論的な傾向の弱点を補うものとして人間を統合的に促えようとする考え方をブラウン(Brown、J.)らの生気論にみる。つまり彼は神経系の刺激性と興奮性と疲労に注目し、神経系がエネルギー的に強力(sthenic)と無力(asthenic)な状態に変化すると考えた。彼のエネルギー論的な視点は、ベアード(Beard、G.M.)の神経衰弱"neurasthenia"、ミッチェル(Mitchell、S.W.)の"resttreatment"、ジャネ(Janet、P.)の"psychasthenia"へと引き継がれた。
神経衰弱論の起源は、デカルト的な機械論。身体医学が支配的となる18世紀のヨーロッパ。ジルボーグ(Zil-boorg、G.)は、この機械論的な傾向の弱点を補うものとして人間を統合的に促えようとする考え方をブラウン(Brown、J.)らの生気論に求めた。彼は神経系の刺激性と興奮性と疲労に注目し、神経系がエネルギー的に強力(sthenic)と無力(asthenic)な状態に変化すると考えた。彼のエネルギー論的な視点は、Beard、G.M.の神経衰弱"neurasthenia"、ミッチェル(Mitchell、S.W.)の"resttreatment"、ジャネ(Janet、P.)の"psychasthenia"、さらにFreudへとつながる。
Freudは神経症を現実神経症と精神神経症に大きく2つに区別した。神経衰弱は現実神経症の典型である。精神分析の対象としなかった。それは主として生物学的な過程である。コフートは「現実神経症は器質的障害の直接的な現れであり、内省と共感によらず非内省的な研究方法で、たとえば生物学的手段で研究すれば、より豊かな成果が約束される」領域であると考えた。
精神エネルギー論で、エネルギーが低下した状態として神経衰弱を考えていた。
消耗抑うつは長期間にわたる職業的な負荷、あるいは同じく長期間にわたる情動的な緊張に続いて発症し、 1.過敏一無力性前駆期(Die hyperasthetisch-asthenische Prodromalphase)、sthetisch-asthenische 精力性ー弱力性。 2.心身症症状期(Die psychosomatische Phase)、 3.(固有の)うつ期(Die depressive Phase)という経過をたどる。
第一段階の過敏一無力性前駆期は、易刺激性、易疲労性、集中力低下、入眠困難などが長期間続くことにより特徴づけられる。 第二段階の心身症症状期には様々な自律神経症状、内分泌症状がみられる。動悸、血圧異常、頭痛、食欲低下などを自己観察して心気不安に駆られる。 第三段階の(固有の)うつ期には精神運動制止などの抑うつ症状がみられる。不安、心気あるいは不機嫌、投 げやりが前景に立つ。運動性の不穏情動の爆発聴覚過敏不眠なども特徴である。原発性罪業感やうつ病性妄想は見られない。
これらの特有の症状および経過によって、消耗抑うつは、心理反応性抑うつとも内因性うつ病とも異なるものである。内因一反応性の境界領域にあると考えられた。
うつ病の連続体的な把握である。上図でexhaustion depressionと出ている。名前は違うかもしれない。曲線は少し違うかもしれない。しかし内因と心因の関係の概略はこんな感じだろう。