トッドは、結婚した息子が親と同居するか別居するかを縦軸に、兄弟が遺産相続で平等であるか否かを横軸にして、家族を4つの類型に分けました。親子が同居して、兄弟が不平等(つまり長男相続)のタイプが「直系家族」。この直系家族は、土地所有や家業と結び付きやすく、親・子・孫と代々、先祖が所有しているものを受け継いでいく。日本ではこれが主流です。
対するに、フランスのパリ盆地では、親子が別居で、兄弟が平等の「平等主義核家族」が普通です。これだと、家族や家系よりも個人が最優先され、家族や家系というものはあまり意識に入ってこない。
brotherといっても兄なのか弟なのかわからない言語の違いにも反映されていると思う。
パリの平等主義核家族は親子別居が大原則ですから、特にフランス革命以後、子どもは勝手に職業を選んで、親の職業を継がない。
フランスには「売官制度」というのがあって、フランソワ1世の時代からこれが盛んになる。金ができるとブルジョワは、息子に高等法院の官職を買ってやり、法服貴族にする。息子が貴族になったら、親は出自を隠すために廃業する。これの繰り返しだったから、創業何年というのを誇りにする伝統というのは、生まれなかったのですね。むしろ、子どもを貴族にすることができなかった、落ちこぼれということになってしまう。